今回の改正案が1月22日に閣議決定される前段階で、政府提案の改正の方向性について与野党連絡協議会で話し合いが持たれた際に、これまで述べてきた「まん延防止等重点措置」などの本質的な問題に対して、批判的な意見を述べたのは国民民主党のみで、ほかの野党は沈黙した。
その後の代表質問(1月20、21日)や、事実上の与野党協議である自民党の森山裕氏と立憲民主党の安住淳氏の間での国対委員長会談でも、「まん延防止等重点措置」の「平時」と「有事」との切り分けの問題や、そもそもの必要性(立法事実)および期間制限の有無などの問題点についての批判的指摘や改善提案がなされたとの報道はない。
また26日に始まった与野党の修正協議では、罰則の過料金額の減額や感染症法改正案に盛り込まれた入院拒否者への懲役刑の削除などが議論されている一方、「まん延防止等重点措置」については国会への報告を規定する議論がなされているだけで、本質には立ち入らないことを事前に握っているかのような交渉が行われている。
慌てて法案を通そうとするプロセスの稚拙さ
このまま改正案が罰則に関しての微修正程度で成立した場合、わが国の法の支配の後退と政党政治の弊害を憂えざるをえない。昨春の法改正から8カ月以上時間があったにもかかわらず、今まさに「緊急事態」という状況で慌てて不備ある法案を通そうというプロセスの拙速さも問題だ。
冒頭紹介した有志の会による緊急提言の発信は、このような政治の現場での立法のブラッシュアップについての機能不全や、政党およびマスメディアの適切な「争点整理」の機能不全も前提としている。何となく必要だという漠然とした「空気」が前面に押し出され、「法治」や「法の支配」がひっこめられてしまう日本社会の現状には強い危機感を覚えている。
今ほどわれわれ一人一人が「眠れる主権者」のままでいてはならない状況はそうないだろう。私たちの代表者たちがいかなる法案に賛成しようとしているのか、ひいてはわれわれはどのように設計された社会に足を踏み入れようとしているのかを理解したうえで、今回の法改正の賛否を考えてほしい。それは、近くあるともいわれている総選挙の材料にもなるはずだ。
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