「いつかは海外に」と考えている日本企業の盲点 ベンチャー企業に足りない視点はどこにあるか

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日本のベンチャーのグローバル化が遅れている理由とは?(写真: ヨーグル /PIXTA)

現代日本社会の重大課題の1つは「国際化」だとよく指摘されている。島国という地理的環境、内向きな国民性、一定規模がある国内市場など、さまざまな原因が取り上げられている。

その影響のためか、日本発のベンチャーも「ドメスティック」になりがちだ。しかし一方で、「海外進出したい」と考えるベンチャーも多数存在する。

一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターの調査では、「既に海外進出をしている」日本のベンチャー(設立5年以内のベンチャー企業)は13%にすぎない一方で、過半の52.8%のベンチャーが「今後海外展開をする計画がある」と回答している。そこで今回は、日本のベンチャーの海外進出について、課題と改善策について考えたい。

日本のベンチャーに足りない点

以前の記事でご紹介した「ラクダ型スタートアップ(Camel Startups)」は、今までのようなユニコーンを目指す企業のやり方(赤字のままVCから投資を受け、規模を拡大させる)と違い、以下の特徴を有している、日本のベンチャーにも向いているモデルである。

a.創業時から収支を重視
b. VCだけでなく、さまざまな形で資金調達する
c.人材も市場も国際的

aとbの特徴を有しているベンチャーについては、政府の補助金なども活用し、財務状況も健全で、日本でも最近増加している。しかしcについては、日本のベンチャーは苦戦しがちな点でもある。

背景には3つのハードルがある。日本のベンチャーの起業家に、海外進出や今後の戦略について聞くと、「今は国内に集中している。会社が軌道に乗ってから海外のことを考えたい」「いつか海外に行きたいが、まず目の前のことで手いっぱいで……」といった話をよく聞く。

一聴して違和感はないが、実は「国内のことを安定させてから海外を考える」というのは大きな間違いである。これが1つ目のハードルだ。

インディアナ大学のTricia P McDougall-Covin名誉教授らは、2003年に「海外に進出しているベンチャー(international new ventures)」と「国内のみ活動しているベンチャー(domestic new ventures)」の比較研究を行い、海外に進出しているベンチャーのほうが、イノベーション力・サービス・品質・物流などにおいてもレベルが高いことを明らかにした。

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