「いつかは海外に」と考えている日本企業の盲点 ベンチャー企業に足りない視点はどこにあるか

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また、海外進出するベンチャーは、起業チームの構成からマーケティング戦略まで、何もかも国内のみのベンチャーと違うため、「会社が安定してから海外進出」ではなく、「海外進出するなら最初からそれにふさわしい企業戦略を策定する」ほうが正しい順番だといえる。

他国の起業家は最初から海外進出を検討していることが多いようだ。中国の深圳と北京で筆者がインタビューしたテック関係の起業家は、「東南アジアやアフリカはこれからだが、いずれ海外に行くと最初に決めている」「中国国内で(膨大なデータを使って)システムを検証し、その次はインドネシアなどに持っていきたい」と最初からグローバルビジョンを明確にし、海外進出に向けたコツ(内容は本稿最後に記述)を使ったり、海外で勤務した経験があるIT人材を取締役会に入れたりする。

また、アメリカのヘルスケアベンチャーのピッチを聞くと、「これは、日本やアジアにも広げられそう」と思った会社は、大体、アメリカ国内と海外市場への展開を視野に入れ、海外のVCともコンタクトを取っている。

日米のベンチャーに詳しいアメリカ投資家のDr. Takashi Kiyoizumi(清泉貴志)氏は、「中国・韓国のベンチャーはアメリカでホールディングス(持株会社)を作ることが多いが、日本のベンチャーは少ない」と指摘する。そのため、中韓のベンチャーはアメリカにおいて、より容易に資金調達と市場調査ができている。

「海外って怖い」はもう古い

日本のベンチャーがなかなか海外に手を出さない2つ目の理由は、海外に対する恐怖心である。言語がわからない、文化が違う、未知の市場、食事が合わない、治安が心配……。

ビジネスでも生活面でもリスクが大きいため躊躇する起業家が少なくない。これも一見正当な理由だが、実は真逆で、海外進出したほうがリスクヘッジできるはずだ。

ラクダ型スタートアップを提唱したAlexandre Lazarow氏は、著書で、フロンティア・カー・グループ(FCG)という新興国で中古車取引を行うベンチャーについて紹介している。

同社は、当初5カ国で支社を作り、中には閉鎖した支社もあったが、最も優秀な支社経由でさらに4カ国への進出に成功した。これは海外進出によるリスク分散と資源配分の成功によるものと同氏は指摘している。

ベンチャーによる海外進出のメリットはこれだけではない。各地の強みを利用し、よりよい製品を作ることもメリットである。例えば、義足の研究開発で非常に注目されている東京大学発ベンチャーのBionicMは、研究開発は日本、試作品製作・ユーザーテストなどは中国といった戦略を立て、各国それぞれの強みを発揮しながら会社を成長させている。

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