債務危機の中国リチウム大手、増資撤回の失策

短期売買の疑念を招き、市場の信認得られず

天斉鋰業は借入金に頼った海外鉱山買収がたたり、深刻な債務危機に陥っている。写真は同社が権益を持つオーストラリアのリチウム鉱山(天斉鋰業のウェブサイトより)

中国のリチウム大手で深刻な債務危機に直面している天斉鋰業は、1月17日、わずか2日前に明らかにした増資計画を撤回すると発表した。短期売買を通じた不当利益を得ようとしているとの疑念を招き、投資家や証券取引所の信認を得られないリスクがあると判断したからだ。

同社が1月15日の株式市場の取引終了後に発表した増資計画は、支配株主である天斉実業集団およびその全額出資子会社に対して増資後の発行済み株式の23%に相当する4億4312万株を1株当たり35.94元(約576円)で発行し、約159億2600万元(約2551億円)を調達。銀行借入の返済と運転資金の補充にあてるという内容だった。

しかし計画が開示されるや、増資の真意を怪しむ声が投資家から噴出した。というのも、再生可能エネルギー関連株への投資ブームのなか、電池の原材料として欠かせないリチウムの採掘権益を持つ天斉鋰業の株価は上昇を続け、1月15日の終値は過去最高値の59.76元(約957円)を記録していたからだ。

つまり投資家たちは、増資計画は親会社の天斉実業集団が手元の天斉鋰業株を市場で高値で売り抜け、後から安値で買い戻そうというスキームではないかと疑ったのである。

証券取引所が質問書で説明求める

そう勘ぐられるのも無理はない。天斉実業集団は2020年7月から12月にかけて8861万株の天斉鋰業株を売却し、平均売却価格での計算で20億2000万元(約324億円)を現金化していたからだ。その結果、天斉鋰業に対する持ち株比率は36.04%から30.05%に低下していた。

増資発表翌日の1月16日、天斉鋰業の上場先である深圳証券取引所は同社に質問書を送付。天斉実業集団が増資引き受けの資金をどのように調達するのか、増資計画は(中国証券法の規制対象である)短期売買に相当しないか、少数株主の利益を損うことがないかなどについて説明を求めた。

この質問状が、天斉鋰業がわずか2日で増資撤回に追い込まれる決め手になった。債務危機からの脱出を目指す同社にとって、これは手痛い失策となりそうだ。

本記事は「財新」の提供記事です

天斉鋰業は2018年12月、銀行団から35億ドル(約3635億円)を借り入れてチリのリチウム生産大手SQMの発行済み株式の23.77%を買収した。ところが、その後の業績不振で利息の支払いもままならない苦況に陥ってしまった。

2020年12月にはリチウム権益の一部をオーストラリアの資源会社IGOに売却し、14億ドル(約1454億円)を調達。それにより銀行団から債務返済の最大2年の延期を取り付け、デフォルトを回避したばかりだった。

(財新記者:羅国平)
※原文の配信は1月17日

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