「16歳で産んだ子」と20年後に再会した母の葛藤 探して会いに来たわが子に話せない当時の事情

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「大家族」というと、テレビのスペシャル番組で見るような「わいわい楽しい」雰囲気を思い浮かべるかもしれませんが、実際にはいろんなケースがあるのでしょう。「子どものときは最悪でした」と直美さんは話します。

「一人部屋なんてないし、みんな年が近いから喧嘩も多い。新しいお洋服を買って、みたいなことを言った記憶もないな。お下がりばっかりで、物欲もない。

いま母親に聞くとやはり苦労していたようで、食費もカツカツだったって。(子どもたちは)勝手に育ったっていう感じです。父親の仕事のこともあって、周りの子と環境が違い過ぎて学校ではいじめられたけど、私も噛みついて仕返しをしたりして(笑)」

7人きょうだいのなかには“派閥”もありました。彼女は年子の姉からいつも目の敵にされており、「姉の派閥」とは敵対していたそう。直美さんが父親に目をかけられていたことも、姉の反感を買う背景にあったようです。

「テレビで見る大家族は、きょうだいみんな仲良く協力しあっているけれど、私たちはそういうふうではなくて。めいめいが奔放すぎて、協調性もあまりない。家は私にとって居心地がよかったわけじゃなく、あまり居場所がなかったんですね」

表情を変えずに語られた妊娠の経緯

そのような背景から、直美さんは中学生の頃から、あまり家に帰らなくなったといいます。小学生のときから人懐こく、大人と仲よくなりやすかったのですが、中学に入るとますます行動範囲が広がり、近くのマンションの屋根(屋上ではない)で野宿をしたり、ゲームセンターの常連や店員さんと仲良くなって、バックヤード(休憩室)に入り浸ったり。「学校に行かないときは、大体ゲーセンにいた」そう。

「妊娠は中3の終わり頃。正直なところ、自分で意図してそういう関係になったわけじゃなくて。当時、別に彼氏もいました。私はよくゲーセンで仲良くなった大学生の車に乗せてもらって出かけたりしていて、そのなかの一人。車で寝ちゃっていたときで、何が起きたのか実際の記憶はあまりないです。相手ははっきりしていますけれど」

表情を変えずに話し続ける直美さんに、正直なところ、戸惑いました。意識がない状態で性行為が行われたなら、それは許されない犯罪です。でも、彼女の言葉に怒りはありません。

直美さんは妊娠したことを、「お利口さんでいい子じゃなかった、自分のせい」だと思っているのです。それに相手は、生まれた子どもの父親でもあるので、悪く言いたくない気持ちももしかしたらあるのでしょうか。

体調が悪い日が続き、母親と病院を訪れたところ、妊娠が判明。このときはすでに、堕胎が可能な時期を過ぎていました。

「そのときはもう、相手がどうこうとかじゃなくて、『どうしたらいいんだろう?』って。自分がやってきたことが跳ね返ってきたんだなって。『助けて』とかじゃなくて、『もう消えてしまいたい』だったな、あのときは。本気で泣いたし、自殺も考えました」

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