基準上、全面パート化が容認されても、子どもの利益を考える事業者は保育の質を守るためにクラスに正規雇用の担任を配置しようとすると思います。しかし、利益を最大化したいと考える事業者は、全面パート化による人件費削減をねらうでしょう。
「短時間勤務の保育士の活躍促進」のプランには、常勤保育士が十分に確保できず、市区町村がやむをえないと認める場合にパート化してもよいことにすると書いてありますが、実際には厳密な運用は難しいと思います。結局、保育士のパート化推進になってしまって、保育士全体の賃金水準がさらに下がることにもなりかねません。
このままでは、保育士の職業としての魅力が低下し、適格な人材を集めることが困難になり、保育の質が低下するという、負のスパイラルは避けられないでしょう。
規制緩和の前にすべきこと
「短時間勤務の保育士の活躍促進」という前に、配置基準の改善や、業務の見直しなどによって正規雇用保育士の負担を軽減するべきではないでしょうか。加えて、育児休業と時短勤務制度(正規雇用のまま6時間の短縮勤務ができる制度、短時間勤務制度ともいう)を利用しやすくする両立支援も必要です。
また、仮にパートタイマーがクラス担任となるとしても同一労働・同一賃金(業務内容や責任の範囲が同じ場合に待遇を差別しないこと)を要件にすべきです。2020年4月よりパートタイム・有期雇用労働法が施行され、正規雇用と非正規雇用の不合理な差別は禁止されることになりました。2021年4月からは中小事業所にも適用されます。
保育士が、責任に見合った処遇を受け、ゆとりをもって働くことができ、子どもを産んでも育児休業と時短勤務で仕事を続けられるようにすることは、保育の質の確保・向上にとって、どうしても必要なことです。
今回発表された「規制緩和」は結果的に保育の質の低下につながる可能性があり、本末転倒と言わざるを得ません。
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