保育士「全員パート化」容認が招く現場の疲弊 政府は「保育士不足解消」の一手としているが…

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保護者との関係でも、クラス担任が責任者になります。ケガや発熱などがあったときは急遽子どもを医療機関に連れていくこともあります。子ども同士のトラブルもあります。そんなことも含め、保護者と連絡をとりあったり相談したりして、家庭と連携をとっています。

子どもに関する記録をとり、年に何度かは保護者と懇談し、子どもの生活や発達について伝え、助言をします。クラス担任にはそんな幅広い仕事を、責任をもって行うことが求められています。

また、3歳未満児については、子どもと保育士とのアタッチメント(愛着関係)が必須なので、保育士が細切れで交替するような体制は、絶対に避けなければなりません。

パート保育士にも十分な専門性や経験をもつ人材はいます。そんな保育士が細切れの交替にならないようにうまくチームワークを組めば、求められる業務をこなすことは可能かもしれません。しかし、時給労働の安い賃金のまま、正規雇用と同じ仕事をさせられることをパート保育士は受け入れるでしょうか。

正規雇用の保育士が離職するわけ

すでに認可保育園ではパート保育士がたくさん働いています。週に3〜4日、1日5〜6時間程度という働き方が多いようです。パート保育士がいなければ、保育が回らないという保育園は多いと思います。

保育の質に配慮している保育園では、クラス担任、つまり配置基準で決められている人数の保育士は正規雇用の常勤を配置し、朝夕や給食時間をサポートする補助役としてパート保育士を配置している場合が多いと思います。ところが、保育士不足の中で、特に正規保育士の採用が厳しくなっている現状があります。

正規雇用保育士の離職の背景には、仕事の負担の重さがあります。前述のように、クラスの運営に責任をもち、かつ一人一人に目を配るのはたいへんな仕事です。

2019年5月に発表された「東京都保育士実態調査」では、現在就業中の保育士で「今後も保育士として働き続けたい」と考えている人の割合が、正規雇用の保育士(73.6%)よりも有期契約フルタイム(82.5%)、有期契約パート(85.0%)のほうが高くなりました。さまざまな面の満足度を調べると、「保育士としての仕事全体のやりがい」は雇用形態による違いはないのに、「勤務日」「勤務時間」に関する満足度は、有期契約パートタイム、有期契約フルタイムの順に高く、正規雇用は最も低いという結果になりました。

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