大行列!「奇跡の喫茶店」は、いかに誕生したか 愛される「石釜ホットケーキ」が生まれた理由

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野中:ホットケーキと似たようなものとしてパンケーキがありますね。両者はどこが違うのでしょうか

ホットケーキとパンケーキとの「違い」とは

遠藤:それも私、調べました。ホットケーキとパンケーキ、家庭用の商品として両方の粉を発売している森永製菓によると、「甘さ」と「膨らみ」が違うそうです。ホットケーキはふんわりとした膨らみがあって、生地に甘みがある。それに対し、パンケーキの生地は薄く、甘みも少ない。スイーツとしてだけではなく、食事にもなります

パンケーキのほうが歴史は古く、グローバルな食べ物。つまり、欧米発祥で、日本には明治時代、文明開化の進展とともに入ってきた。それが進化を遂げ、ホットケーキという日本独自の食べ物が生まれたというわけです。

そんな蘊蓄にも触れながらまとめた本で取り上げた「ホットケーキの神さま」のひとりが、ここにおられる田村信之さんです。東京の神保町にある「石釜bake bread 茶房TAMTAM(タムタム)」の店主で、私たちは今、そのTAMTAMにいて、先ほど、店自慢の石釜ホットケーキを野中先生と一緒に味わったところです。

野中郁次郎(のなか いくじろう)/一橋大学名誉教授。1935年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。富士電機製造勤務の後、カリフォルニア大学(バークレー校)経営大学院にてPh.D.取得。南山大学、防衛大学校、一橋大学、北陸先端科学技術大学院大学各教授を歴任。日本学士院会員。知識創造理論を世界に広めたナレッジマネジメントの権威。主な著作に『知識創造企業』『失敗の本質』などがある(撮影:今祥雄)

野中:初めての味ですが、とてもおいしかったです。見た目はまるで焼きたてのパンのようで、普通のホットケーキとまったく違う。ナイフを入れると柔らかいカステラのようで、バター、シロップ、生クリームと一緒に食べると、何ともいえない味です。特別な材料でも入っているのでしょうか?

田村:実は、バニラアイスとリコッタチーズが入っています。

野中:最近、「広島風お好み焼きの達人」の様子をテレビで見ました。一日の時間帯によって、焼き方を微妙に変えていると言っていました。

それはそれで技を極めているわけですが、お好み焼きの新しいコンセプトを打ち出しているわけではない。田村さんのホットケーキは、まさに「新しいホットケーキのコンセプト」を作られたように感じます。

遠藤:材料もそうですが、「石釜でホットケーキを焼く」という発想そのものが素晴らしい。見た目も味も食感も、ほかのホットケーキとまったく違う。外はカリカリ、中はサクッとしてジューシー。まさに「ホットケーキのイノベーション」です。

これを求めて、日本全国からお客さんが殺到するんです。店の前にはいつも行列ができ、混雑すると3時間待ちだそうです。私のよく知る一部上場企業の社長もそうやって並んで食べ、おいしさに感動したそうです。

田村さん、なぜ「石釜で焼く」という発想が生まれたんですか

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