大行列!「奇跡の喫茶店」は、いかに誕生したか 愛される「石釜ホットケーキ」が生まれた理由
野中:ホットケーキと似たようなものとしてパンケーキがありますね。両者はどこが違うのでしょうか。
ホットケーキとパンケーキとの「違い」とは
遠藤:それも私、調べました。ホットケーキとパンケーキ、家庭用の商品として両方の粉を発売している森永製菓によると、「甘さ」と「膨らみ」が違うそうです。ホットケーキはふんわりとした膨らみがあって、生地に甘みがある。それに対し、パンケーキの生地は薄く、甘みも少ない。スイーツとしてだけではなく、食事にもなります。
パンケーキのほうが歴史は古く、グローバルな食べ物。つまり、欧米発祥で、日本には明治時代、文明開化の進展とともに入ってきた。それが進化を遂げ、ホットケーキという日本独自の食べ物が生まれたというわけです。
そんな蘊蓄にも触れながらまとめた本で取り上げた「ホットケーキの神さま」のひとりが、ここにおられる田村信之さんです。東京の神保町にある「石釜bake bread 茶房TAMTAM(タムタム)」の店主で、私たちは今、そのTAMTAMにいて、先ほど、店自慢の石釜ホットケーキを野中先生と一緒に味わったところです。
野中:初めての味ですが、とてもおいしかったです。見た目はまるで焼きたてのパンのようで、普通のホットケーキとまったく違う。ナイフを入れると柔らかいカステラのようで、バター、シロップ、生クリームと一緒に食べると、何ともいえない味です。特別な材料でも入っているのでしょうか?
田村:実は、バニラアイスとリコッタチーズが入っています。
野中:最近、「広島風お好み焼きの達人」の様子をテレビで見ました。一日の時間帯によって、焼き方を微妙に変えていると言っていました。
それはそれで技を極めているわけですが、お好み焼きの新しいコンセプトを打ち出しているわけではない。田村さんのホットケーキは、まさに「新しいホットケーキのコンセプト」を作られたように感じます。
遠藤:材料もそうですが、「石釜でホットケーキを焼く」という発想そのものが素晴らしい。見た目も味も食感も、ほかのホットケーキとまったく違う。外はカリカリ、中はサクッとしてジューシー。まさに「ホットケーキのイノベーション」です。
これを求めて、日本全国からお客さんが殺到するんです。店の前にはいつも行列ができ、混雑すると3時間待ちだそうです。私のよく知る一部上場企業の社長もそうやって並んで食べ、おいしさに感動したそうです。
田村さん、なぜ「石釜で焼く」という発想が生まれたんですか?