大行列!「奇跡の喫茶店」は、いかに誕生したか 愛される「石釜ホットケーキ」が生まれた理由
遠藤:野中先生、この話は「知識創造理論」の「SECIモデル」に合致する事例だと思うのですが、いかがでしょう?
石釜ホットケーキは、まさに「知識創造モデル」
野中:どんぴしゃりだと思います。まず田村さんとそのデザイナーが月2回、徹底的に話し合い、暗黙知を共有するペアになったわけです。そのときにデザイナーが偉かったのは、「行列をつくる」というチャレンジングな高い目標を掲げたことです。
そのための方策を2人で、いや奥様含めて3人で練っているうち、「石釜を入れる」というアイディアが出た。さらにそこに、いろいろな食材を入れてみたら、というアイディアが出て、最後はホットケーキも石釜で焼くことになった。
焼く過程が変わるわけですから、材料にも一工夫しなければ、ということで、アイスクリームとリコッタチーズを入れた。メープルシロップと生クリームを添えるというのも、試行錯誤して出たものだと思います。こうして行列してでも食べたい、唯一無二の食べ物になったわけです。
田村:ありがとうございます。
遠藤:最初から石釜でホットケーキを焼くというアイディアが田村さんの頭の中にあったわけでなかった。デザイナーと「ペア」になり、「協働作業」から、そのアイディアが生まれたわけです。イノベーションの多くは「予想もしない偶然」から生まれます。「セレンディピティ(偶然の幸運)」というにふさわしいと思います。
その「セレンディピティ」を手にするには、座して待っていては駄目で、「行動」が伴わなければなりません。その行動が、田村さんの場合、カフェ講座に通うことであり、そこで出会った方に店舗デザインを任せたことでした。知識創造というと小難しく考えてしまいがちですが、実は私たちの身近なところで日々起きているということを教えてくれています。
野中:「思い」と「行動」、そのどちらも大切です。それがあれば必ず「同志」が現れます。今日は詳しいお話を伺えませんでしたが、ひょっとして、奥様も田村さんにとってかけがえのない同志なのではないでしょうか。
実は、僕の勤務先がここから歩いて数分なんです。こんなお店があるとはついぞ気づきませんでした。また食べに来ますよ。行列があまり長くないときに(笑)。
(構成:荻野進介)
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