テレビ「総コロナチャンネル化」の強烈な違和感 「見ずにはいられない」心理を突く罪深さ

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また、その不安や怒りに輪をかけているのが、不安を過剰にあおるようなナレーションとテロップ。

たとえば、14日・15日に放送された番組からピックアップすると、まずは「全国6605人 多くの地域で“感染爆発”危機」「東京の感染者8万人超す」「東京『感染爆発の兆候』自宅療養 急増8837人」などの数字を絡めたフレーズで危機感を抱かせました。

さらに、最も厳しい「入院待機者が倍増」「病床使用率は限界間近」「重症患者断るケースも」「入院先決まらず死亡した例も」「命の選択迫る」「発熱外来 電話殺到」「医師困惑 陽性率が急増」などの病院絡みを筆頭に、「閉店続出」「売上は8割減少」「ランチ客も減少で悲鳴」などの経済絡み、「党内からも『後手後手』の声」「危機意識で自治体と政府に温度差」などの政治絡みで、不安や怒りを誘うフレーズを連発。番組の大半をこれらのフレーズが埋め尽くしているうえに、赤の大文字や爆発を思わせる装飾などを使い、視聴者感情をあおっていました。

これらが本当に恐ろしいのは、「不安や怒りをあおられるほど、またそれを見ずにはいられなくなる」という人間心理を突いた構成・演出であること。「備えあれば患いなし」という実用的な構成・演出であれば問題ありませんが、「見たくないのについ見てしまう」という心境にさせる番組であるところが罪深いのです。

「緊急事態」をまったく感じないスタジオ

そしてもう1つ、世間の人々に問題視されはじめているのは、番組の制作スタンス。人々はコロナを伝える報道・情報番組から「緊急事態」を感じないことに違和感を抱いているのです。多くの報道・情報番組で「昨年の緊急事態宣言時よりも国民の危機感が薄い」ことが繰り返し報じられていますが、視聴者にしてみれば「それはあんたの番組も同じだろ?」と言い返したい気分なのでしょう。

そういう気持ちになる人々がいるのも無理はありません。たとえば、前述した「連日にわたる各番組の街頭インタビューは不要不急の外出ではないのか」「町を歩く人々にインタビューで接触しないでほしい」などの声が毎日のように挙がっていますが、まさに正論です。

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