トヨタ流「セントレア」に見えた空港経営の本質 民営化の是非よりも先に「やる気」が問われる
具体的には、2009年度に旅客数900万人で赤字になった後、2011年度にはさらに890万人に減ったにもかかわらず、黒字を確保できた過去の実績にヒントがある。「目指さないといけないのは、たとえ旅客数が900万人になったとしても黒字になれる体質だ」。
建設計画の段階から立ち上がった運営会社は、愛知県などから出向した自治体職員と企業関係者らでスタートしたが、現在は本体の約200人の社員のうち、自治体からの出向は1割程度にとどまる。設立後に新規に採用したプロパー職員が9割を占め、官民の出身母体を意識することはほとんどない。いわば「セントレア流の人材」が育ちつつあるという。
「空港は、極めて公共性の高い事業。普通の会社の感覚では、空港のビジネスなんて成り立つわけがない。国のサポートは絶対に必要。その中で、民間経営みたいなことを取り入れながらいかに健全にしていくか。結局は、空港が好きで、会社が好きで、飛行機が好きで、みたいな人間が前向きにやっていったら、やれると感じている」
空港会社を運営するにあたって、民間か、第3セクターか、運営形態の議論は的を射ない。仕事に携わる目的や目標を経営者と社員が共有する限り、「方向性を大きく見誤ることはない」。犬塚社長はそう強調した。
変革に意欲ある人材の登用を
翻って、国管理空港で第3セクターが運営する沖縄県・那覇空港。2019年の乗降客数は約2176万人で、羽田、成田、関空、福岡、新千歳に次いで全国で6番目に多い。那覇を拠点にした飛行4時間の圏内に、アジアの主要都市を網羅し、島嶼県でありながら、その“商圏”はどこよりも広い「恵まれた地域」だ。
2020年3月に第2滑走路が供用開始されたときには、中国、台湾、マレーシア、シンガポールの航空7社から新規就航の打診があった。アジア地域において、認知度も期待度も高い。さらに、コロナ収束が見通せない現状においてもなお、GoToトラベルの需要を真っ先に引き込む吸引力は、日本経済の回復がここから始まる予感を確実なものにした。
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