トヨタ流「セントレア」に見えた空港経営の本質 民営化の是非よりも先に「やる気」が問われる

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16年前の開港以来、環境対応やカスタマーサービス、商業施設の開拓の面で常に他地域の先陣を切ってきた自負がある。だが、「ほかの空港もレベルアップし、追いつかれてしまった。着陸料の低減も、もう競争力にはならない」(犬塚社長)。

空港敷地内には2018年以降、新たにテーマパーク「フライト・オブ・ドリームズ」や、第2ターミナル、愛知県の国際展示場などが続々と整備されたが、「もう一歩先に行けるようにいろんな軸を持ちたい」と犬塚社長は言う。

格安航空(LCC)向けに2019年9月に開業した第2ターミナル=12月4日、中部国際空港(筆者撮影)

900万人でも黒字に

2005年開港のセントレアは、建設設計段階から民間の経営によって市場競争原理が取り入れられ、社長は5代続けてトヨタ出身者が務めている。人工島の埋め立て段階から、トヨタ生産方式にちなんだ手法で建設費を1700億円以上圧縮したことはよく知られているが、それ以外にも主要業務の管理部門を1カ所に集めて可視化する「大部屋方式」による運営体制や、商業的な儲けに力点を置く戦略などの先進性が、評価されてきた。

これまでに赤字になったのは、リーマン・ショックによる景気後退の影響を受けた2008、2009年度の2年間。それ以降は2019年度まで10期連続で黒字を確保している。

犬塚社長はトヨタ時代、同社が世界的な景気後退で歴史的な赤字決算に陥った2009年、総合企画部長を務めトヨタの“最悪期”を経験した。その後も、リコール問題を含め毎年、数々のリスクイベントにぶち当たったという。

「業績的に会社が潰れるんじゃないかという思いになったとき、(豊田)章男さんだけじゃなく、キーとなる役員が何をやっていたかということが頭の片隅に残っていて、つねにそれを考えている。トヨタは儲かっているときでも関係なく、無駄を省くことをギシギシやってきた。今回のコロナは、原価低減の意識を含め、一つひとつの空港の直営事業の収益についてもういっぺん、きっちり見直すきっかけになった」と話す。

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