河瀨直美監督が目指す「1000年先にも残る映像」

東京五輪公式映画の監督が後世に伝えたいこと

10月23日から公開中の映画『朝が来る』。その撮影中に撮られた河瀨直美監督のワンカット ©2020『朝が来る』Film Partners
作品の上映延期や制作の中断などに見舞われた映画業界。コロナ禍をどう乗り越えていくのか。『週刊東洋経済』12月21日発売号の「2021年大予測」では、世界経済や国内業界の2021年の見通しから、スポーツ、エンタメ、文化の動向まで幅広くトピックスを扱っている。その中から、新作『朝が来る』が10月に公開され、東京五輪の公式映画監督も務める河瀨直美監督のインタビューをお届けする。

特別養子縁組の子が不幸せでないことを伝えたかった

――新作は「特別養子縁組」がテーマです。養子が産みの親との法的関係を解消し、戸籍上は養親の実子となる制度ですが、なぜ今取り上げようと思ったのでしょうか。

本作は辻村深月さんの小説が原作。「とにかく一回読んでみて」と人に薦められて手に取ったが、それが運命的な出会いになりました。

というのも、私自身が養子縁組の子どもだからです。私にとっての家族は、血の繫がりだけではない関係の中で存在するもの。一方で、日本社会は養子に対して不寛容で「かわいそうな子」と見られてしまいます。映画を通じて、特別養子縁組の子どもは家庭でたっぷりの愛を受けて育ち、けっして不幸せではないんだよ、と伝えたかったのです。      

そのうえで丁寧に描きたいと思ったのが、養子の「朝斗」の視点です。つらい不妊治療を経験して養子を迎えることにした夫婦、中学生で妊娠した「ひかり」の人生が中心に描かれるなかで、朝斗がこの世界をどのように見ていくのか、その世界は豊かなものなのか、表現したかった。

『週刊東洋経済』12月21日発売号の特集は「2021年大予測」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

――映画の中では、生みの親のひかりが出産後に転落していく様子と、恋人が何事もなく学校生活を送っている様子が対比的に描かれています。結局、女性の側だけが妊娠、出産の責任を背負っていく現状が垣間見えます。

10代など若くして妊娠してしまう女性の多くが、親との関係が良好ではなく、妊娠しても頼れない場合が多い。子どもの父親にも逃げられてしまっています。映画に出てきた「ベビーバトン」のように、子どもを育てられない親が出産の場所を見つけて養子に出せるケースはまだいい。けれどニュースでは、(少女が子どもを遺棄するなど)目を覆いたくなる事件が報じられています。彼女たちを犯罪者に仕立て上げているものは何なのかを考えるとき、社会のありようや家族関係を見直すことも重要だということに思い至る。

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