河瀨直美監督が目指す「1000年先にも残る映像」 東京五輪公式映画の監督が後世に伝えたいこと
もし開催できたら、開会式で国立競技場にアスリートが集うだけで本当に感動的だと思います。過剰な演出はいらない、むしろシンプルなアスリートファーストの形であるべきです。
五輪映画に「宇宙から見た地球」の視点も入れたい
五輪といえば、世界の人が1つの場所に集まって行う地球大運動会。平和に向かっていくための人類の栄ともいえる。スポーツを通じて、戦うのではなくて競い合い、リスペクトし合うところに本来の意義がある。今回の場合は、そこに「コロナ禍」という要素が加わっているからこそ、より本来の理念を実感できるはずです。
もっとも、今の世界では大国同士の分断が起こり、世界の情勢は緊迫しています。国際連合やWHO(世界保健機関)などの国際機関の機能は弱体化し、よりどころを失いつつある人類は、コロナによってこの先の未来をどこに踏み出すのかを試されています。人類全体のことを考えられる人が、若い世代から出てきてほしいと願っています。
五輪の映画に「宇宙から見た地球」という視点も入れようと思っています。宇宙飛行士の方とブレストしながら気づくことが沢山あります。宇宙から見た地球は本当に青く美しく輝いているそうです。彼らは宇宙に出た瞬間に何か大いなる存在を感じ「サムシング グレート」と呼ぶ。「地球がこんなに美しいのに、なんで争っているんだ人類」と思えるそうです。こうした客観的な視点を入れることで、オリンピックの精神を広く世界にそして未来に届けることができたらと思っています。
――今後はどのような映画を撮りたいですか。
1000年後の人にも見てもらえる映画を創りたい。奈良の大仏さんは、約1000年前に作られて今も私たちの前にいらっしゃる。さらに、東大寺には膨大な古文書が残っています。記録は、残すことで事実になる。
私も映画を撮ることを通じて、この時代を切り取り、それを後世に伝えていきたい。「こんな大変なこともあるけれど、人間というのはいいものだよ」と、そのときに生きている人が「生まれてきてよかった」と思えるような作品を残したいです。
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