「YOASOBI」が年間音楽チャートを制した理由 コロナ禍でTikTok発と新人のヒット曲が続出

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今年のトップ10にベスト盤はランクインしていない。ここから、ベスト盤でなくとも「知っている曲、ヒット曲があればアルバムを購入して聴く」というユーザーの行動が読み取れる。ヒット曲を入り口にアルバムを購入する流れが再び定着すれば、CDアルバム市場が下げ止まりとなる可能性もありそうだ。

続く2021年はどんなアーティストがブレイクするのか。注目は男性ボーカルの楽曲だという。具体的には藤井風Vaundy (バウンディ)、川崎鷹也などだ。

「コロナの影響もあり、動画で楽曲を使う流れは続く。女性ボーカルの曲は落ち着いてきたので、次は男性アーティストでボーカルが前面に出ている曲がヒットするのではないか」(礒崎氏)。TikTokは動画を楽しむだけでなく、ユーザーが音楽に出会う場所としてより重要性を増している。TikTokを攻略したアーティストが上位を占める可能性がある。

2021年は「王道」のヒットが復活か

2020年は多くの映画やドラマが延期になり、タイアップによって人気を獲得する王道のヒットが生まれにくかった。ライブ開催が困難になり、フェスで注目されストリーミングで人気になる形も難しかった。そもそも楽曲のリリース自体を見送ったアーティストも多い。こうした傾向から脱却できるか注目される。

また、多くのアーティストが無観客のライブ配信に挑戦しており、ファン以外の一般層にライブの魅力をアピールできるか、といった点もポイントになる。

コロナ禍で大きな影響を受けた音楽業界だが、新たなヒットの形が生まれ、新進気鋭のアーティストが上位に進出するなど、シーンの多様性が示されたのは明るい材料だった。2021年は優れた楽曲を生み出すことはもちろん、音楽を楽しむユーザーの行動をつねに把握し、彼らを巻き込むアピールをしていくことが、ヒット創出の重要な条件になりそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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