「43年後のアイ・ラヴ・ユー」は壮大な純愛物語だ シェイクスピアの名場面織り交ぜ壮大な愛描く
撮影はスペイン、フランスのパリ、アメリカ・ロサンゼルスなど、国を超えて撮影が行われた。ロセテ監督は「本作で一番苦労したのは名だたる俳優たちと連携をとり、まとめること。彼らのスケジュールを数週間にわたって押さえ、数カ国にわたって行う撮影は本当に大変だった」と振り返るが、「しかし魅力的な脚本とストーリーのおかげで、全員が最後まで全力を出し切れた。最高のクルーと協力し、素晴らしい作品ができあがったことをとてもしあわせに思う」と充実した様子を見せる。
デートを重ねたニューヨークとパリ、優しいガーシュインの音色、甘いユリの香り、そしてシェイクスピアの「冬物語」――。若かりし2人にとってはかけがえのない思い出であるが、特にリリィが女優であり、クロードが演劇評論家であったという設定が本作の物語に深みを与えている。
物語の根幹に関わる部分なので詳細を記すことはできないが、日本シェイクスピア協会会長で、東京大学教授の河合祥一郎氏が本作に寄せたコラムによると、脚本には、シェイクスピアの「ハムレット」や「冬物語」の設定やセリフが、物語の中に巧みに織り込まれており、「演劇に詳しい人なら100倍楽しめる作り」になっているという。もちろん演劇に詳しくなくても楽しめる作品だが、そうした演劇や文学への目くばせ、愛情が本作の魅力となっている。
シェイクスピア好きが楽しめる構成
ちなみにアルツハイマー病とは、記憶、思考、行動に問題を起こす脳の病気のこと。アルツハイマー病協会によると、アメリカでは500万人以上がアルツハイマー病を発症しているという。その患者数は増加傾向にあり、一説によると、2050年までにその数は1300万人以上に増加するのではないかと予測されている。
それだけに決して他人事とは言い切れない社会背景があるが、そうした病気を題材にしたことについてロセテ監督は「この物語は避けられない運命と戦う2人の壮大な愛の物語です。しかし、それを悲しい物語にするのではなく、観客が自然に泣いたり笑ったりできるようなストーリーにしたかった」と語る。それゆえにわれわれの心にも温かいものが残る。
(文中一部敬称略)
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