通常国会は6月22日までで残り10日余だが、安倍政権が目指す集団的自衛権の行使容認は、会期中の閣議決定のメドが立たない。
安倍首相は5月7日に「期限ありきではない」と述べ、一度は先送りの意向を表明したが、6月6日に「議論の加速化を」と語った。今国会の会期内に安全保障法制に関する閣議決定を行い、その中に行使容認を明記する道を探り始めた。菅官房長官は閣議決定の文案策定準備を始めたことを明らかにした。
安倍首相は、自身の国家観や安全保障観、政治思想などに基づいて政策や路線を選択する「理念派」と多くの人が受け止めている。政治家としての達成目標は「戦後レジームからの脱却」で、集団的自衛権の行使容認への挑戦もその路線の一環と見られる。
だが、別の安倍像を強調する人もいる。菅官房長官は「しっかりした国家観と理念を持っているが、そこに向かう道は非常に柔軟。強硬一辺倒という姿は見たことがない」と評している。
第1次内閣で首相秘書官を務めた参議院議員の井上義行氏も、「オペレーションやシミュレーションに基づいて政策や外交を組み立てる現実主義者。官房副長官時代以来、政権の中枢にいて、現実の日米関係や防衛問題への対応という経験を積み、現実主義で、と考えるようになったと思う」と語る。
集団的自衛権問題への挑戦意欲は第1次内閣時代から明確だったが、中国の膨張主義や北朝鮮の挑発路線など、安全保障の環境激変を見て「抑止力の強化が必要」と痛感し、第2次内閣で本腰を入れるようになったようだ。
一方、安倍首相は「政治家に努力賞はない」「結果が悪ければ全く意味がない」という考え方の持ち主だ。集団的自衛権の行使容認は国家安全保障と日米関係強化のための現実的な対応策と考え、「努力賞」で終わらせるのでなく、結果を出さなければ、と懸命になっているに違いない。
だが、与党協議も見通しが立たず、閣議決定の行方も不透明なのは、公明党の強い抵抗だけでなく、安倍首相の「理念」と「現実的対応」の中身が、いまだ国民の多数の支持と共感を獲得していないからではないか。
強硬一辺倒でないなら、「急がば回れ」を考慮し、長期戦覚悟で民意と結託する道を模索すべきだろう。
(撮影:梅谷秀司)
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