化粧水が「肌の奥まで浸透できない」納得の理由 「美容常識」のウソを形成外科医が深く解説
「あれ? どういうこと?」と思うかもしれません。角質層まで浸透するといわれると、なんだかものすごく奥のほうまで染みわたってお肌によいような気がしてしまいますが、角質層というのは、肌表面の厚さ0.01から0.03ミリの部分を指します。
死んだ細胞の表面をうるおわせているだけ?
ここで肌の構成についてお話ししておきましょう。わたしたちの肌――皮膚は、真皮と表皮からなりたっています。そのうちの表皮が肌表面にあたる部分で、厚さは平均0.2ミリほどです。
この肌の表面(=表皮)はさらに分類され、外側から順に「角質層」「顆粒層」「有棘(ゆうきょく)層」「基底層」の4層から構成されています。つまり、いちばん外側にあるのが角質層です。
そして、この角質層は、表皮の第4層目にあたる基底層が絶えず分裂をくりかえすことで押し上げられた“死んだ細胞”からつくられています。少々ショッキングな表現かもしれませんが、肌の表面は“死んだ細胞”で覆われているのです。
イメージ図をご覧いただいてもわかるように、角質層の次にある顆粒層より下の部分には細胞核の点が見えますが、角質層にはありません。細胞が生きていないので、血液中から栄養が補給されることもないのです。化粧水などの薬物が浸透するのは一般的に、この死んだ角質細胞で形成されている「角質層」まで。その下で細胞分裂している肌の「奥」に、届くことはありません。
また、角質層はいちばん外側にあるので、見た目の美しさを左右します。それゆえ、この角質層を一生懸命ケアしようとするわけですが、角質層はそもそも、しばらくすれば垢となって剥がれる運命なのです。実は、化粧品の管理をおこなっている「薬事法」という法律でも、化粧品が角質層(=角層)よりも奥まで浸透するという広告は禁じられています。
ですから、どんなに効果があるように思える宣伝広告でも、よく目を凝らすとかならず、「浸透するのは角(質)層まで」とどこかに明記されているはずです。多くの人が、このたった0.01~0.03ミリの死んだ細胞の表面をうるおわせるために、化粧水をせっせと使っている、ということになるわけですが、果たして意味があるでしょうか。
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