影山ヒロノブが語る「アニソン」が持つ真の使命 誰でも歌のフレーズはしっかり染みついている

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面白いのは、クラシックやロックと同列に、アニソンの項目があるのは本来不自然なことなのに、皆、当たり前に受け止めている。それどころか、日本語の、しかもアニメソングの略語である「アニソン」が、そのまま世界中で通用するようになっていることです。

実はこのこと1つを考えただけで、本が1冊書けるくらい、ユニークな現象だと思います。ではそうした特徴を踏まえたうえで、あらためて俺の視点でアニソンを定義してみるとしたら、どうなるか。

当たり前のことですが、アニソンは言葉の通り、アニメや特撮の番組のために作られた歌です。例えばオープニング主題歌は、いよいよ物語が始まるという時に、週に1回の放送を待ちに待っていたテレビの前の視聴者をわくわくさせてくれる、つまり気持ちをアゲてくれる歌です。

一方でエンディング主題歌は、ヒーローやヒロインと一緒に戦ったり冒険したりして、高ぶった気持ちをリセットし、興奮のスイッチを切ってくれる、という役割を与えられているのでしょう。

そこに付け加えるなら、アニソンとは、番組の「主人公への応援歌」であるべきだと俺は思います。つまりスポーツ観戦のように、主人公の戦いをスタンド的な場所から見守り、主人公にパワーを送ろうとする、それこそがアニソンに与えられた役割で使命ではないでしょうか。

そこを踏み外してしまうと、たとえアニメのために作られた歌であっても、アニソンというよりは、イメージソングになってしまう。俺はそう考えています。

アニソンが歌う「入門編の正義」

あるいは、アニキ(水木一郎氏)の言葉を借りるなら、アニソンは「魂」と定義できるかもしれません。

アニソンが歌っているのは、基本的には「仲間を守る」「弱い者いじめはいけない」というような「入門編の正義」とも言えるものです。

学校の先生や親は、やってはいけないことや道徳的なことを、教科書的に教えてくれます。それに対してアニソンは、視聴者と同じ位置から、もっとストレートで、飾らぬ言葉で「こうするべきだ」と伝えます。

俺自身、アニソンを通して伝えたいと意識していることは、「今日は勝てなくても、仲間と力を合わせて頑張れば、きっと明日は勝てる」という想いです。

考えてみれば、「ドラゴンボールZ」や「聖闘士聖矢」「スーパー戦隊シリーズ」だって、どれもそういった物語ですよね。その物語の「顔」であるアニソンは、物語に沿った歌であって当然ですし、そうあらねば意味がないと思います。

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