「不登校は不幸ではない」といえる確かな理由 コロナ禍で増加する不登校の子どもたちの処方

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ミウラくんは学校に行けない時間は、「自分の会いたい人に会う」と決めて、分身ロボットOriHimeを開発している吉藤健太朗さんや『五体不満足』の著者・乙武洋匡さんなどに会いに行くようになった。

「僕は先天的な心臓病で、平均寿命も告げられていました。だから、我慢して学校に通うよりも、会いたい人に会うこと、したいことをすることに時間を使いたいと思うようになっていきました」

2018年には、ミウラくんは一般社団法人こどもエンターテインメントをお母さんと立ち上げ、「助け合いが自然にある社会への導線をデザインする」を掲げて活動を始めた。さらに、2020年にはこれまでの活動を記した『TKマガジン』という自著も作った。ミウラくんは高校への進学の道は選ばず、フリーランスとして自身の活動を続けていく道を選んだという。

「学校に行くことには理由はいらないのに、学校に行かないことには理由が必要。でも、子どももそれぞれ違う個性を持っています。学校に通える人は通えばいいけれど、通わない選択肢もあってよいのではないのではないでしょうか。これからは、子どもの頃から自分の意思で自由に選択できる社会システムができたらいいなと思っています。年齢に関係なく、人が幸せに生きていける社会を目指したいと思っています」

自己治癒能力を信じてのんびり構える

不登校経験がある2人に共通していたのは、学校以外の世界を見つけて没頭していたことだ。子どもたちは「学校が世界のすべて」になりがち。だからこそ、不登校になると自分の居場所を失ったと感じ、絶望してしまうこともある。学外の社会と接続し、孤独にならないようにすることが大きなポイントといえそうだ。

「学校での出来事や本人の心の動きにいつも以上に耳を傾ける。その際、『大人としてのアドバイスをしない』ことにも注意したい。本人の思いや判断を大切に受け止めてほしい」と、江川氏は家庭における子どもへの接し方の重要性について強調する。

「一番はのんびりと構えていること。『学校に行かなくなった』という事態に保護者の方は慌ててしまい、意外とこの『のんびり構える』ことが難しい。傷つく経験があったとしても、子どもは自己治癒能力を持っている。それを信じることが大切だ」(江川氏)。

全国の不登校は小学校1年生から6年生までで総数53,350人、中学校は127,922人に上る(「令和元年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について(文部科学省)」)。コロナウイルスの猛威が続けば、不登校の子どもたちはさらに増加する可能性がある。

しかし、学校に行かないことと、そうした選択をした子どもたちが不幸かどうかはまた別の問題。学校に行くことも、学校に行かないことも、選択肢の1つ。子どもたちを信じた、大らかな社会が求められている。

佐藤 智 ライター・教育コラムニスト

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さとう とも / Tomo Sato

両親ともに、教師という家庭に育つ。都留文科大学卒業後、横浜国立大学大学院教育学研究科へ入学・修了。教員免許取得。新卒で、ビジネス系出版社の中央経済社へ入社。その後、ベネッセコーポレーションに中途入社し、教育情報誌『VIEW21』の編集を経て、独立。ライティングや編集業務を担う、レゾンクリエイトを設立。著書に、『公立中高一貫校選び 後悔しないための20のチェックポイント』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『先生のための小学校プログラミング教育がよくわかる本』(共著/翔泳社)がある。

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