「不登校は不幸ではない」といえる確かな理由

コロナ禍で増加する不登校の子どもたちの処方

現在通信制の高校に通う福岡県在住の中井けんとくんは、地域の公立小学校に通っていた4年生の後半からいじめにあい、5年生には完全に不登校になった。

当時中井くんは、真面目に学校で勉強し、将来は公務員になりたいと考えていたという。だから、どんなに辛くても、学校からは逃げてはいけないと思っていた。保護者からも「いじめに負けるな」と励まされていたが、通学する時間になると嘔吐や壁に頭を打ち付けるなどのパニックを起こすようになる。

学校に行かなくなり、最初の1週間ほどは「もういじめっ子に会わなくていい」という安堵感があったという。しかし、しばらくすると、「学校に通うという一般的な道を外れてしまって大丈夫だろうか」という不安や、「僕がいじめに耐えてきた1年間はなんだったんだ」など自分を責める思いがフツフツと湧いてきた。また、どんどん外出もしにくくなっていったという。

「近所で、『あの子、不登校じゃないの?』といわれているような気がしていました。学校のチャイムが聞こえてくることや、テレビに学校に通っている子どもの姿が映し出されると自分が『負け組だ』と言われているような気持ちにもなりました」

「学校に行っていない」という劣等感が和らいだ

そんな中、母親から講演会と交流会が一体となっているイベントに誘われた。外に出る怖さがある一方で、「このままではいけない」「何かが変わるかもしれない」という思いもあり、参加した。誰かと話すのが怖ければ講演だけ聞いて帰ればいいと思うと少し気持ちが楽になった。

「今振り返ると、母は僕が興味を持ちそうなイベントを探して声をかけてくれていました。交流会で会った人に、『不登校ということは休みがたくさんあるということだよね。学校に行ったらできないことをすればいいんじゃない?』と言ってもらえたんです。不登校になった自分はダメなんだとしか思えなかったのですが、そうした言葉で少しずつ元気を取り戻すことができました」

算数をすっかり忘れていたことに危機感を覚え、自宅で勉強も再開した。
「勉強して何よりもよかったのは、『学校に行っていない』という劣等感を少しずつ和らげることができたことでした」

しかし最後まで、「いじめた人を許せない」という感情だけは残り続けた。ある時、中井くんはその思いを絵本に描き、それをワークショップイベントで販売した。お客さんに、理解してもらったり褒めてもらったりすることで、自分の思いを認めることができ、いじめた人を恨む気持ちが薄れていったという。すると、次第に「なぜ彼らは僕をいじめなければいけなかったのか」と考えるようになったという。

「いじめていた時のことを思い出すと、彼らは『習い事ばっかりで時間がない』とか『やりたいって言ったのに親がダメっていった』など愚痴を言っていたんです。抑圧されたストレスをいじめという表現でぶつけてきたのかもしれないと思うようになりました」

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