ネット炎上参加で勝ち誇る人への大いなる疑問 指バッシングが自己確認の儀式になっている

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相当根深い問題をはらんでいる(写真:taa/PIXTA)

コロナ禍になって以降、ネット炎上が先鋭化している。

しかも、些細な出来事への過剰反応といったケースが続発している。日本においても気に入らない対象を抹殺する「キャンセル・カルチャー」という過激な文化が蔓延し始めており、人心の荒廃が進むコロナ禍の状況も手伝って、この動きは今後加速する恐れが否めない。最近だけでも、ナイキのCM、cakes(ケイクス)のホームレスに関する記事、「マルちゃん正麺」のプロモーション漫画等々――枚挙に暇がない。

ナイキのCMが炎上したワケ

ナイキのCM「動かしつづける。自分を。未来を。」は、3人のサッカー少女がアイデンティティや差別などの困難を乗り越えるドラマを主軸にしたものだが、「在日問題」が扱われていたことから「日本人ヘイト」だと怒り狂う人々が現れた。

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cakes(ケイクス)では、ホームレスの3年にわたるルポで「異世界性」などの表現にみられる立ち位置が、「人権意識を欠いている」などとして批判が殺到した。「マルちゃん正麺」のプロモーション漫画は、父親が子どもにラーメンを作る話だが、帰宅した母親が洗い物をする展開が物議を醸すことになった。いずれも、ネット発のコンテンツであることが特徴といえる。

「キャンセル・カルチャー」とは、欧米を中心に近年ソーシャルメディアを席捲している「個人や企業が不快なことを言ったり行ったりした場合、謝罪するか視界から消えるまで支援しないことで大勢が一致団結すること」を指す(ネットで不快な行動糾弾「キャンセル・カルチャー」 米社会の分断促進/afpbb 2020年8月10日配信)。ボイコット(不買運動)などに発展することが多い。

海外では、ファンタジー小説『ハリー・ポッター』シリーズで有名なイギリスの作家J・K・ローリングによるトランスジェンダーに関するコメントや、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズの監督を務めていたジェームズ・ガンが過去にTwitterに投稿した小児性愛や強姦などについての不謹慎なジョークが槍玉に上がった。

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