ネット炎上参加で勝ち誇る人への大いなる疑問 指バッシングが自己確認の儀式になっている

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ここで最も恐ろしいことは、問題視される対象に「反論」や「議論」の余地を与えず、その企業や人物自体を排除してしまうことを意図していることである。場合によっては文脈や時間といった要素がことごとく無視され、何年も前の発言やログから「燃えそうなもの」が〝発掘〟されることもある。有名なブランド、著名な人物であるゆえにその発信力を危惧した抗議行動といえば聞こえはいいのだが、「なぜこの企業・人物のこの表現だけがとりわけ攻撃の対象となるのか」という疑義はおおむね不問に付されている。つまり、ソーシャルメディアのエコシステム(生態系)に驚くほどナイーブなのである。

ソーシャルメディアの特性として、情報全体における文脈や信憑性などよりも、感情的なインパクトを短時間で共有するスピーディさが上回る事実が挙げられる。これがユーザーの心理的距離が近いスマートフォンで完結する「指バッシング」の火蓋が切られやすい状況を作り出してしまうのだ。そこでは、賛否を表明する「いいね!」ボタンを押さなくとも、トレンドをチェックするだけで正式な観客として参加したことになる。ローマ帝国のコロッセオ(円形闘技場)と何ら変わるところがない。

関心経済がソーシャルメディアを支配

ソーシャルメディアを支配しているのは、アテンション・エコノミー(関心経済)の原理である。わたしたちが無料でソーシャルメディアを利用できるのは、「わたしたちの関心」によって広告収入が得られるからだが、その関心の中身はプラットフォーマーにとってはどうでもよい。

どれだけくだらないことがバズろうが、どれだけくだらないことが炎上しようが、人々がアテンション・エコノミー(関心経済)を内面化して、話題を呼びそうな膨大なコンテンツ(投稿)を矢継ぎ早にシェアし、それに乗り遅れまいとタイムラインを凝視すること。脳科学的に興味を持ち続けるよう巧妙に調整された画面や通知などのシステムがそれを後押しする。いずれにしても、人々の関心をアプリ内につなぎ止めておくことが重要なのだ。

ソーシャルメディアのこのような側面について、スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセンは、「『あなたの注目』こそが、彼らの製品なのだ」と明快に述べた。

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