「XC40」PHVから見えたボルボ電動化の深謀遠慮 日本導入全車両を完了、クルマと環境の今後

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こうした禁止/規制策は30年以上前から環境保護団体含めて大なり小なり声が上がってきていたが、いずれも代替エネルギー案が非現実的であったり、時期尚早であったりした。

今回は違う。禁止/規制策のムーブメントはこれまで以上に現実味を帯びている。その理由の1つに2次エネルギーの主軸を「石油精製品(ガソリンなど)」から「電力」へ転換したいという思惑が見え隠れするからだ。

筆者は、電動化=BEVのみではないし、電動化が温暖化の抑制や温室効果ガスの削減に直結する唯一の解決策でもないと考えている。なぜなら、石油精製品と電力は共に2次エネルギーであり、源流の1次エネルギーにしてもいまだ8割程度が化石燃料であるからだ。

ただ、SDGsの開発目標13に謳われている、「温室効果ガスの76%がCO2」→「だから燃焼時にCO2を排出する化石燃料の使用を抑えよう」とする流れはその通りだと思うし、筆者個人として考えてみてもできる範囲で総量を減らす活動を実践したい。そのためには同時に、代替燃料である再生可能なグリーンエネルギーや、結果的に棚上げが続く放射性廃棄物の課題クリアを前提とした原子力の活用も視野に入れるべきだし、CO2以外の温室効果ガスであるメタンや一酸化窒素、フロンだって減らしたほうがいい。

日本のCO2総排出量(11億3800万t)のうち、運輸部門は18.5%にあたる2億1000万t。このうち自家用乗用車が46.1%の9697万t。ざっくり日本ではCO2の約8.5%が乗用車から排出されている(2018年度・国土交通省発表)。

いずれにしろ大前提である温室効果ガスの削減には、1次エネルギーの構成見直しが不可欠。内燃機関であれば燃費数値をさらに高めてCO2排出量を減らし、電動化にしても2次電池の高効率化や燃料電池などとのさらなる共存が求められる。

温室効果ガスの削減には、2次電池の高効率化や燃料電池などとのさらなる共存が求められる

レアメタルのリサイクルも重要課題

電動化の促進には、レアメタルのリサイクルも重要課題。2020年4月時点で1500万台以上のハイブリッドカーを普及させたトヨタでは、使用済となったハイブリッドカーが搭載するニッケル水素バッテリーからニッケルを抽出して再資源化する取り組みを2020年代の早い時期に展開する。

ニッケルはリチウムと並ぶ希少なレアメタル。現状、2次電池の正極材料として欠かせない天然資源の1つだから、裏舞台では争奪戦が繰り広げられている。

そしてこの先は、人や物が移動する際に発生するCO2のあり方も俎上にのってくる。トヨタが進めるモノやサービスがつながる実証都市「Woven City/ウーブン・シティ」では、低エネルギーで高効率な移動の検証も行われるという。無駄な移動が抑えられ、必要な移動にエネルギーを傾ける、そうした取り組みが一般化するなかで、社会の電動化は温暖化防止策の1つとして次世代へと受け継がれていくのではないだろうか。

西村 直人 交通コメンテーター

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にしむら なおと / Naoto Nishimura

1972年1月東京都生まれ。WRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。(協)日本イラストレーション協会(JILLA)監事。★Facebook「交通コメンテーター西村直人の日々

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