PCR検査拡充を敵視する人に知ってほしい難問 無症状者がコロナ感染を広げている現実がある

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別の事例だ。

『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』オンライン版に掲載されたアメリカ海軍医学研究センターの臨床研究では、1848人の海兵隊員を対象とした研究で、定期検査で感染が確認された51人中、46人は無症状、残る5人も症状は軽微で、あらかじめ定められた検査を必要とするレベルには達していなかったとのことだ。

発熱や倦怠感などの症状からコロナ感染を疑われたケースは1例もなかった。これらの結果からわかることは、無症状患者への検査の拡充こそが重要であるということだ。

少なくとも、医療従事者や高齢者施設で働くスタッフには無症状であっても公費で検査できるよう整備したほうがいいだろう。それがひいては、高齢者や健康弱者を守ることにつながるからだ。

この冬、インフルエンザとコロナ流行に伴い、保健所対応だけでは心許ないと考えた厚生労働省は、まずかかりつけ医に電話で相談し、そこが指定医療機関であれば診療を受け、指定外であればほかを紹介してもらう形を取ることにした。自治体間でかなり差が出ているが、指定機関になることをためらう施設が多いことがよくわかる(下表)。

(外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

クリニックが見切り発進するしかない事情

クリニックとしては、使命感と経済的事情から、リスクがあろうと見切り発進するしかないのだ。濃厚接触者ではないかぎり、無症状では検査を受けることができない現状は、さながら丸腰で戦場に送られるようなものだ。

医療機関としては、「自衛するしかない!」というわけで、自費でのプール方式唾液PCR検査に乗り出す民間医療機関も出てきている。

「プール方式」とは複数人から採取した検体を混ぜて検査する手法で、個別検査よりも費用が安く、判定時間も短くなるというメリットがある。東京都世田谷区は区が行う検査への導入を目指しているが、国は否定的な姿勢を崩していない。

私の高校の同級生が院長を務める大阪府の病院でも定期的に検査を行い「安全・安心」をうたっている。同病院ではスタッフ約150人。関連老健施設150人。あわせて300人を1週間に1回PCR検査を行っている。陰性証明としてネームプレートに『コロナ安全宣言』を掲げている。

彼の病院では、コスト削減のため、10人ひとまとめでプール法を行っている。300人分が30サンプルになる。もちろん陽性が出れば、また10人分のPCRをかけることになる。

もちろん、検査と検査の期間内に感染した場合、ノーリスクとは言えない。しかし、持っているスペックを最大に活用して努力している。参考にできる医療機関は多いだろうが、最大のネックはやはりコスト面であろう。

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