自粛期間に「一躍有名になった料理人」の正体 「#おうちでsio」がツイッターで話題になった

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ただ、お客第一だからと言って、従業員にしわ寄せがいくような方針をとることはない。コロナで減収したときも役員報酬はゼロにしたが、従業員の雇用と給与は守ったという。

鳥羽氏自身、飲食業界で下働きから始め、厳しい労働環境も経験してきた。sioを立ち上げたのには「働き方を新しくしたい」という思いもあった。「幸せの分母」の中には、従業員も含まれているということだ。

高級店のsioから、丸の内で展開するo/sio、カジュアルなパーラー大箸まで、業態もいろいろだが、客単価2万円から1500〜2000円と価格帯のうえでもバリエーションを持たせているのは、人件費を確保するためでもある。単価が安い店ばかりだと利益も少なくなり、人件費にあてられる分も限られてくる。高い店と安い店の両方をつくることで、人件費面は平準化、かつ底上げもできる。

シェフには店を任せ、経営は会社がサポート

従業員数は23〜24人にアルバイトが加わる。店舗にも人を多めに配置する。代々木上原の店舗は18席程度の小さな店だが、シェフ2人のほか5〜6人が働く。

新人でも早いうちから仕事を任せるようにしている。キャリアによっても異なるが、入社3カ月で客に提供する料理を担当させることもある。また新店を立ち上げれば、シェフとして店を任せ、経営は会社としてサポートするそうだ。

飲食の業界では、若手が独立して新しい店を立ち上げても、続けていくのが難しい。2年以内に5割がつぶれるとも言われているほどだ。

sioオーナーシェフの鳥羽周作氏。サッカー選手、小学校教員を経て、32歳で料理の世界へ。今は経営者としてメニュー開発や店舗プロデュース、ブランド立ち上げなどに力を注ぐ。チーム力を重視しており、従業員が働ける場所を増やすために店舗を展開してきたという(撮影:尾形文繁)

「経営と料理の腕は違う。キャリアの選択肢を増やしてあげることで、いい料理人を増やしたいと考えています」(鳥羽氏)

「料理の業界を変える」ことを目指しているわけではないが、自分や自分の運営する会社が、社会の中でも、従業員にとっても喜んでもらえる存在でありたいと考えているようだ。

「これまではシェフとして自分自身がプレイヤーだったが、今は監督として幸せの分母を増やすという目標を目指していきたい」(鳥羽氏)という。

2021年には奈良ですき焼き店、大阪で居酒屋をオープン予定。
また異なる業態において、新しい発想をカタチにしていくsio。今はその幅を大きく広げているファン層がそれをどう受け止めるか、同社はファンの声にどう応えるのか。鳥羽氏の挑戦は続いていく。

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