テレビ局の未来を悩ます「田中角栄の置き土産」 菅政権で放送の悪しき前例主義はどう変わる
民放の配信についても、在京キー局が行った今年2月の同時配信実験について以下のように言っている。
現在、テレビ放送は関東や中京、関西など広域圏をのぞいて、原則的に県ごとに放送局が1系列ずつという県域免許制度のもと、放送番組は県域でしか見られないよう地域制御がなされている。だが答申では、「配信では地域制御をすべきではない」としているのだ。
国民からすると、今は首都圏だけで放送されている番組が地方でも同じタイミングで見られるのはありがたいことだ。例えば、TBSの系列局がない秋田県で『半沢直樹』は首都圏の1週間後の日中に放送されていたが、配信ではこういったことがなくなるということを示している。
しかしこれはローカル局にとっては深刻な事態となる。すでにローカル局は、人口減と高齢化によって活力を失った地元企業からの広告収入の減少で、経営基盤が脅かされている。
そのような中で、これまで見られなかった東京の番組がネットで見られるようになったらどうなるか。当然、ローカル局が放送する番組の視聴者はさらに減り、CM収入も減ってしまう。2〜3局しかテレビ局がない県では、ネットで全系列の番組が見られるようになるダメージは大きい。
7月2日の報告書では「ローカル局の番組を全国展開する機会」としているが、実際にローカル局の制作した番組を全国に配信したとしても、広告収入が得られるほどの視聴数を稼ぐのは至難の業だ。
そうは言っても、放送局は公共の電波を使わせてもらい、競合もごく少数という恵まれた環境に置かれている規制業種。日々、厳しい生存競争を生き延びている一般の企業からしたら、嫌なら電波を返上すればいいと思われるだけだろう。では、民放ローカル局はどうなるのか。
近づくローカル局再編の波
7月2日の答申では、大胆な方針転換が示されている。
これまでは放送法で規定された認定放送持株会社制度で、キー局がローカル局を子会社にしたり、ローカル局同士が資本関係を結ぶなどは可能になっていた。しかし、もはやこれでは足りない。
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