日本代表は「ベスト8以上」を達成できるか 福西崇史氏が語る、ブラジルW杯の展望

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コートジボワールとは対照的に、第2戦で対戦するギリシャは組織力に定評のあるチームです。スタイルは堅守速攻型。守備を固めてカウンターを狙うという正攻法は、日本が“仮想ギリシャ”として5月27日に対戦したキプロスに限りなく近いと言っていいでしょう。しかしレベルはキプロスよりも一段階上ですから、それをどのようにして攻略するかが問われるところです。

福西崇史(ふくにし・たかし)
1976年生まれ。愛媛県新居浜市出身。サッカー元日本代表。新居浜工業高校を卒業後、95年にジュビロ磐田へ加入。日本屈指のボランチとしてJリーグ年間王者3回、アジアクラブ選手権準優勝などジュビロの黄金時代を支える。W杯2002年日韓大会、06年ドイツ大会にも出場。FC東京、東京ヴェルディを経て、09年1月に現役引退。Jリーグ出場349試合、国際Aマッチ出場64試合。2010年よりNHKのサッカー解説者を務める。冷静で的確かつ、ときに情熱的な語り口にファンも多い。サッカー教室の開催などサッカーの普及にも尽力。著書に、『こう観ればサッカーは0-0でも面白い』(PHP新書)、『ボランチ専門講座
』(東邦出版)がある。

ボール保持率を高めて主導権を握れるような展開では、フィニッシュへと結び付けるための“変化”が求められます。

前回大会ではグループリーグ初戦で王者スペインがスイスに敗れるという波乱が起きましたが、まさにこの試合こそ、圧倒的なボール支配率を誇るチームが、守備を固めるチームを攻略できなかったという典型的なパターンでした。どれだけテンポよくパスを回しても、守備を固めるチームにとって“一定”であれば守りやすい。だからこそ、多少強引にでも相手を突破しようとするチャレンジの姿勢が、守備を固める相手に対しての突破口となります。

そうした意味でまさに適任と言えるのが、大久保ではないでしょうか。

コロンビアの懸念材料

ただひたすらにゴールを目指して相手の背後に飛び込む、前を向いたら迷うことなくドリブルを仕掛ける、また、少し遠めの位置からでもミドルシュートを狙うという彼のアグレッシブなスタイルは、よく整備されたギリシャの守備網を破壊するための起爆剤となるでしょう。代表から遠ざかっていたという連係面の不安は、“変化”という意味でポジティブに考えれば、プラス材料にしかなりません。途中起用の可能性を含めて、大久保をいかにいいタイミングでピッチに送り込むかが、大きなポイントとなる気がします。

コロンビアとの第3戦については、第2戦までの結果によって戦い方を決定する必要があるはずです。コロンビアはこのグループで最も力のあるチームと見ていますが、エースのラダメル・ファルカオがケガで代表を外れたこと、さらに誰一人としてW杯経験者がいないことなど、懸念材料も少なくありません。

もしコロンビアがギリシャとの第1戦で敗れるようなことがあれば、精神的な余裕を持って第2戦を迎えるギリシャは日本にとって厄介な相手。だから対戦相手に対する戦力的なスカウティングだけでなく、刻々と変化する状況に応じて戦い方を変える“チーム力”こそが問われる。それこそまさに、W杯という大会を勝ち抜くうえで、最も難しいポイントであると僕は思います。

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