製薬業界は薬価改定や特許切れ対応、開発パイプラインの拡充と財務戦略に注目《スタンダード&プアーズの業界展望》


また、特許切れの主力薬は、日本など米国以外でも販売されており、それらの市場では特許期間や特許切れによる収益減少度合いが米国と異なるため、米国で特許が切れた後も収益を一定程度下支えすると見込まれる。加えて、極めて低い有利子負債水準とそれをはるかに上回る厚い手元流動性が格付けの最大の下支え要因となっている。

スタンダード&プアーズは、薬価改定やこれらの影響を勘案したうえで、13年3月期を底に業績は上向き、同業他社や他業種の同格付け企業と比べても高い収益水準を維持できるとみているため、アウトルックを「安定的」にとどめている。ただし、収益の回復が想定よりも大幅に遅れる見通しが高まったと判断した場合や、大型買収や過度な株主還元策などにより、極めて強い財務体質が、大きく悪化する見通しとなった場合には、格下げとなろう。

一般に、主力薬の特許切れはクレジットリスクになりやすい

11年前後に主力薬の特許切れを控えるグローバルの大手製薬メーカーは、有利子負債での調達で、積極的にバイオベンチャー企業のM&Aを推進してきたほか、大規模な自社株買いプログラムを実施してきた。スタンダード&プアーズは、こうした事業戦略により財務方針が過度に積極的になったと判断し、近年大幅な格下げを相次いで実施した。特に顕著だったのが、09年10月のファイザー(AA/安定的/A−1+)によるワイスの買収案件で、ファイザーの格付けを「AAA」から「AA」に格下げした。

この買収はグループ売り上げの30%を占めるリピトール(高脂血症治療薬)が11年に特許切れとなり、特許切れに伴う収益へのマイナス影響を軽減するためだが、新薬メーカーは一般的にブロックバスターと呼ばれる主力薬への収益依存度が高いため、主力薬の特許切れはクレジットリスク要因となりやすいことを示した。そのためスタンダード&プアーズは、主力薬や大型薬の特許切れによる収益マイナス影響を後継薬、その他新薬の収益拡大でどの程度緩和できるか、パイプラインの最終段階にある品目の収益見通しなどに留意している。

ちなみにメルク子会社の万有製薬(格付けなし)と、小野薬品(格付けなし)は、副作用が少ない「DPP-4阻害剤」と呼ばれる新型の糖尿病治療薬を09年12月に国内で発売を開始したが、同分野では武田薬品の「アクトス」発売以来10年ぶりの新型薬で、市場拡大が見込まれる。

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