長野県は、なぜ日本一幸せな県になれたのか 寝たきりを経験した長野県知事だから、見えたこと(下)

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 「政治」というと、「難しそう」「私には関係ない」「偉い人がなんとかしれくれる」と敬遠してしまいがち。しかし、今まで目を向けてこなかっただけで、当 たり前だけれど、政治と私たちの生活はつながっている。経営ストラテジストで作家、そして1児の母でもある坂之上洋子さんが、「あまり知られていないけれ ど、実はいい政策」をフューチャーし、ビジネス目線、ママ目線、NPO目線で、素朴な疑問を明らかにしていく。第2回目は、長野県知事の阿部守一氏。

※ 前編はこちら:困っている人をたらい回しにしたくない

長寿日本一、幸福度ランキング1位の秘訣とは?

坂之上:長野県がすごいのは2010年に長寿日本一に輝いたこと、そして、幸福度ランキングでナンバーワンになったことではないかと思うのですが。

阿部:はい。日本総研が2013年に発表した幸福度ランキングでは1位でした。2014年は残念ながら3位でしたが。平均寿命については、男性はこの20年ずっと1位で、4年前に女性もようやく1位になりました。

坂之上:何か特別なことをされてきたんですか?

阿部:健康長寿の取り組みは1981年から、もっといえば戦前からやってきたことです。長野には、結核とか赤痢が蔓延していた戦中とか戦後すぐ、保健師をサポートするために県民が自主的にやり始めた保健補導員がいるんです。

その数が県全体で1万人を超えています。約50世帯につき1人の保健補導員が健康指導をしているということになります。

坂之上:50世帯につき1人ですか……。それは、かなりきめ細やかに目が届きますね。

阿部:その中で、1981年からやっているのが「県民減塩運動」です。海のない長野では野沢菜のような塩分の高い保存食が多くて、80年代前半ぐらいまでは脳卒中の死亡率が全国ワーストランキング上位の常連でした。そこで食生活改善推進員や保健補導員の方が、地道に各ご家庭に減塩レシピや減塩カレンダーを配ったり、地域で「減塩教室」を開催してくださったわけです。

地域医療にしても、保健補導員にしても、長野はもともとこんなふうに県民の取り組みが盛んで。私が頑張ったわけではないんです。

坂之上:でも、何かしら、ほかに秘密があるんじゃないですか(笑)? 

阿部:どうでしょうかね(笑)。「みなさんがやっているいいことを後押ししよう」というのを大事にしています。みなさんの力をどう引き出すかっていうことを、いつも考えています。

坂之上:ものすごく大切なことですね。

阿部:はい。あと「日が当たりづらいところにもしっかり目を向けよう」ということも心掛けてます。なんだか地味ですが(笑)。

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