阿部:やっぱり人間って、それぞれ見えてるものが違うから。話が合わなかったり、違う意見が出るのは当たり前です。で、違う意見をはなから敵だっていうのではなくて、どうすれば同じ方向でやれるのかって、考えたいんですよ。
坂之上:阿部さんは、いつも「敵・味方はない」と考えてらっしゃる?
阿部:はい。政治家でも、なんていうか……敵を作ってたたいて住民の支持をもらう、みたいなやり方は長続きしないですよね。声高に叫べばいいわけではないです。
坂之上:仮想敵を作ってそれをたたくのは、実は楽なんですよね。派手ですし。昔からそういう戦術がありますよね。敵を作れば、内部の人をまとめやすくなる。
阿部:でかい声でいろいろ主張したほうが楽だし、仕事やってるように見えるかもしれない。だけど、それだと本質的には変わらない、世の中は決してよくなりません。
坂之上:わかります。いつも民主主義が突き当たる壁ですね。
阿部:結局、人間って感情的なものがすごくウエートを占めてます。理屈ではわかるけれども、感情的には賛成できないということが多いわけですね。
坂之上:はい。子どもにはえらそうに言っても、大人になったって、実は、簡単に感情に振り回されてる……(笑)。
阿部:これから日本が本当にいい形で発展していくためには、意思決定のプロセスや合意形成のあり方をもっと考えていかないと。
坂之上:いろんな人の気持ちを拾い上げて、合意形成していくのは、めんどくさい部分ではあるけれど、そういう考えを日本で成熟させていくためにも、教育って大切ですよね。
物産館ではなく、コミュニケーションの場
阿部:そうそう、「おいしい信州ふーど(風土)」の話もさせてくださいよ(笑)。今、ジビエ(鹿肉)振興や信州ワインバレー構想などの取り組みを通して、長野県産の統一ブランドを作ろうとしています。ヨーロッパにはけっこう農村とか山里にいいレストランがあったりするじゃないですか。ゆくゆくはああいう場所を作りたいんです。
坂之上:田舎にあるおいしい隠れ家レストラン的なところって、しみじみいいですよね。そういえば、長野県は、夏に、銀座にアンテナショップも出されるとか?
阿部:長野県は今までアンテナショップを出していませんでした。だからこそ、ここをただの物産館にはしたくないと思っていて。ここで起業を支援したり、コワーキングスペースも作るつもりです。一緒にビジネスの議論ができるような場所を作りたいんです。
坂之上:物産館ではなく、コミュニケーションの場を、というアイデア、新しいですね。お話を伺っていて思ったんですけど、阿部さんのスタンスは、いい芽を見つけたらそれをどう伸ばすかを真剣に考えるという点が、すべてに一貫されてますよね。
阿部:そうですね。「支える」というスタンスですかね。
坂之上:見えにくいところを支えて、いいところを伸ばす、地味なことをいとわない、そういうところが印象に残りました。
今回はいろいろとお話が聞けてよかったです。ありがとうございました。
(構成:石川香苗子、撮影:今井康一)
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