星付きシェフ「無印で学んだ」料理より大切な事 「美味しい料理」は経営の一部でしかない!

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言い方を変えると、「この通りやれば利益が出る」という勝利の方程式みたいなものをすでに持っていました。例えばそのときのミールムジ有楽町店でざっくり年間4億円の売り上げがありました。1%売り上げを伸ばすには、400万円増やさなきゃいけない。営業は365日、客単価が780円とすると、1日あたり14人のお客さんを増やすことになる。

14人増やすにはどうするのか。味、サービス、告知方法……、それらの総力戦です。例えば、ホール10人、キッチン7名が「いらっしゃいませ」のイントネーションを変えるだけで、売り上げは変わります。

制約が生み出すクリエイティビティ

レシピは一度決めると変えられないので、盛り方やショーケースの見せ方で工夫をする。そうした一つひとつを現場で発見していって、目標設定をして、マニュアルに落とし込んで教育していくのです。

こうしたすべてが、予算という計画から成り立ってるんです。飲食ビジネスは「計画」するものだったんだ、と初めて気づきました。ミールムジは売り上げや客単価は高くなくても、メニュー開発では手を抜きません。全店舗の料理長が月に1度集まり、新メニューがそこで提案されます。

ミールムジのデリは、野菜を使った栄養バランスがよいメニューが基本で、温かいもの6種と冷たいもの12種類。料理長会議において、その18種類のバランスもふまえてメニュー構成を決めていきました。

僕がいたころは「江戸菜のシーザーサラダ」「レバーとこんにゃくの甘ピリ辛煮」「鳥の唐揚げ」あたりが定番でした。僕もショートパスタのメニューなどいくつか採用されましたが、ロングセラーを生み出すことはできませんでした。

また、どの店舗でも、スタッフ2人で20種類ぐらいのメニューをつくらなくてはならないので、簡単につくれるレシピが必要です。僕から見ると制約だらけなんですが、逆にそれを満たしていればなんでもありでした。世界各国の料理が好きな料理長が1人いて、その方は毎回「シンガポール風◯◯」「ペルー風◯◯」みたいな料理を提案していました。

そうした料理のすべてを修業して学んだのではなく、「興味があったらそこからレシピを組み立てられる」って逆にすごい技術です。「クリエイティブだ!」と興奮しました。そうやって数字面やレシピの組み立て方について学んだ僕の中に、少しずつ経営のノウハウがたまっていきました。

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