星付きシェフ「無印で学んだ」料理より大切な事 「美味しい料理」は経営の一部でしかない!

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今の僕は、経営をいちばん重視しています。やっぱり僕は料理人であると同時に、経営者なので。美味しい料理をつくることと、お店を黒字にすること、どちらが大切かといえば圧倒的に後者なんです。

もちろん、料理を軽視しているわけではありません。キッチンではいつも真剣勝負をしていますし、どこよりも美味しい料理を提供している自信はあります。ただ、料理は経営という大きなくくりの中の一部でしかないんです。ホールでのサービスや営業、マーケティングなんかもそうです。

僕はずっと、料理だけで生きてきた人間だから、松井さんから「経営とはなんぞや」というものを教えてもらったとき、衝撃を受けました。やはり、経営をいちばん教えてくれたのは松井さんです。一緒に店に出資してくれると決めてから、松井さんはたくさんのアドバイスをしてくれました。

内装は当初「いちばん安い白い壁紙」

オープン前は「初期投資をとにかく抑えること」と言われました。これは大事な教えで、自分の城を持てたとばかりに、一等地で場所を借りて、内装に凝って、キッチンも最新式の設備ばかりをそろえたりしていたら、初期投資を回収する前に店はつぶれる可能性大です。だから、ラッセの内装は、オープン当初はいちばん安い白い壁紙にしていました。内装にこだわったのは開店して6年目、経営が安定してからです。

オープンしてからは、キャッシュフローを何よりも気にかけていて、FL(食材原価と人件費)をどう一定化させるかを考えています。2カ月に1回の経営会議では松井さんは今でもさまざまなアドバイスをしてくれます。それだけじゃなく、人間としてまだまだ未熟な僕に「異業種から学ぶ」「気づきを行動に移す」といった基本を教えてくれました。

『なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか?』(飛鳥新社)。書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

僕がスタッフにつらく当たっているのを気づいていたのか、「いじめられっ子はいじめっ子になるんだよ」と言われたときは、ハッとしました。松井さんはくどくどと言い聞かせることはなく、いつも鋭く本質を突いてくる感じです。だからこそ、目が覚める。

いつも僕が一週間ぐらい悩んで「こうしたいと思う」と相談すると、一言で答えをくれます。経営の最前線で何十年間もトップランナーとして走ってきているので、選択肢が何万とか、何億とかある中から、瞬時に選べるんでしょう。

僕だったら1m先しか見えないけれども、松井さんの場合は10㎞先が見えているような感じです。どれぐらいのレベルのことで悩んでいるのかを一発で見透かされて、今の僕に合わせてアドバイスをくれる。ささいなことで電話をしても、いつも親身になってくれます。こうやって振り返ってみると、本当にすばらしい師匠たちに恵まれてきたんだと思います。

村山 太一 「レストラン・ラッセ」オーナーシェフ

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むらやま たいち / Murayama Taichi

イタリアの三ツ星レストラン「ダル・ペスカトーレ」で修行を積み、ファミリーを除くトップのス―シェフに就任。その後帰国し、東京都目黒区に「レストラン・ラッセ」をオープン、9年連続で一ツ星を獲得。しかしレストラン経営に限界を感じ、2017年よりサイゼリヤ五反田西口店にてアルバイトを開始。その様子を伝えるnote『目黒の星付きイタリアンのオーナーシェフは、サイゼリヤでバイトしながら2億年先の地球を思う。』が26万PVを記録し話題になる。

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