老舗が続々と閉店「住みたい街・吉祥寺」の変貌 ハーモニカ横丁など人気スポットも点在する

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 いくつかの興味深い結果を抜粋しよう。

【滞在場所(平日)】①アトレ17.8% ②その他小型・個店14.9% ③キラリナ12.2% ④サンロード9.4% ⑤コピス吉祥寺8.6%
【滞在場所(休日)】①アトレ16.0% ②コピス吉祥寺15.6% ③その他小型・個店11.6% ④キラリナ11.1% ⑤サンロード、東急百貨店8.1%
【滞在目的(平日)】①食料品・日用品の買い物39.1% ②ウインドウ・ショッピング12.8% ③食事10.4%
【滞在目的(休日)】①食料品・日用品の買い物34.8% ②趣味・雑貨の買い物13.0% ③ウインドウ・ショッピング12.4%
【平均消費金額(平日)】2186円(1場所当たり)5632円(1人当たり)
【平均消費金額(休日)】 2592円(同)7863円(同)
【印象的な場所(平日)】①アトレ40件 ②その他小型・個店33件 ③キラリナ、コピス吉祥寺20件
【印象的な場所(休日)】 ①アトレ47件 ②東急百貨店29件 ③コピス吉祥寺28件
【同伴者(平日)】 ① ゼロ(単独行動)81.0% ②1人(2人で行動)17.1%
【同伴者(休日)】 ① ゼロ(同)72.2% ②1人(同)24.1%
【現在の居住地(平日)】 ①武蔵野市31.0% ②三鷹市19.0% ③杉並区16.7%
【現在の居住地(休日)】 ①武蔵野市27.0% ②三鷹市24.9% ③杉並区15.8% 

駅ビル、エキナカ施設や大型商業施設への訪問者が多いのは当然だが、個性あふれる個店への愛着ぶりがわかる。意外なのは単独行動が圧倒的に多い点である。日常生活の一環としてのショッピングが多いということなのだろうか。

来街者のうち、市内在住者は全体の3割程度。残りは市外だが、大半が隣接する三鷹市や杉並区、練馬区などであり、「地元度」はかなり高い。東京都外からの来街者は平日5.8%、休日4.1%にとどまっている。報告書は「23区北西部や多摩地域東部において、生活の中心地の1つになっていることがうかがえる」と分析している。

「住みたい街」はどう変わっていくのか

来街者調査を見る限り、吉祥寺の街は観光客やインバウンドで賑わってきた原宿や、韓流人気で若い女子たちが集まる新大久保などとはまったく街の性格が異なる。たしかに吉祥寺でも若い人たちを多く見かけるが、中高年も多い。

残念ながら多くの老舗がコロナ禍で閉店となってしまったが、それでも40年以上続くジャズクラブの名店「SOMETIME」や、幅広い世代の人に愛されている焼き鳥の「いせや総本店」など健在の店も多い。

市街地から歩ける範囲に井の頭公園や井の頭自然文化園(動物園)といった緑豊かな自然エリアがある点も大きな魅力だ。子どもたちに大人気の宮崎アニメの世界を堪能できる「三鷹の森ジブリ美術館」(三鷹市=現在メンテナンス休館中)も、バスですぐの距離にある。

武蔵野市観光ガイドは、ワンデートリップとして3モデルを紹介している。①マンガ・アニメの聖地巡礼 ②緑あふれるスポット巡り ③仲良し親子の公園・動物園めぐりーー。駅から半径300メートルのエリアの中で、シニアも若者も子どもも、いろんな世代がそれぞれの楽しみ方をできる街といっていい。

コロナ禍の深刻化で飲食店に限らず厳しい経営状況が続く店が多いと思うが、何とか乗り切って、吉祥寺をますます魅力的な街にしていってほしいものである。吉祥寺や井の頭公園などを舞台に、中村雅俊や田中健が大学生を演じた青春ドラマ『俺たちの旅』(1975年~76年)の放映から半世紀近くになる。当時ドラマを観ていた若者はすでに60代以降。そんなオールド吉祥寺ファンも、気になる街の変貌と進化を見守り続けている。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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