社長が2年半出社しない会社が急成長する理由 「ライフシフト」「両利きの経営」に学ぶ人生戦略

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一方、都内までの通勤には、毎日往復4時間弱かかっていました。みんなからは「大変ですね」と言われましたが、子育てや仕事に追われる中で、実はこの4時間が僕のパーソナルタイムになっていました。英語や経営を勉強する時間に充てられましたし、必要なら別途グリーン車代を払って集中して仕事をすることもできました。

僕はかなりのハードワーカーですが、休日に海で過ごせるというだけで明日への活力が生まれましたし、湘南では、仕事とは関係のない、釣りやサーフィンのコミュニティーにも参加できて、そこで個性的な方々と出会い、学びを得て視野も広めながら、それを仕事に活かすことができました。新しいネットワークに身を置いてたくさんの気づきを得るという、まさにライフ・シフト的な実体験ができたのです。

地方へのライフ・シフト

僕らの会社は、もともとは東京の人材を東京の企業に紹介するという事業を行っていました。それが発展して、現在は北海道から沖縄まで、地域金融機関と資本提携することで、その地域の優良企業を開拓し、そこに高度人材を紹介するというオンラインサービスを展開しています。2018年に銀行法が改正され、銀行が人材紹介事業を行えるようになったことが、大きな後押しにもなりました。

日本のGDP約550兆円のうち、どれだけが東京都で生み出されているか、皆さんはご存じでしょうか。答えは、たったの19%。つまり、東京以外にも、日本には素晴らしい企業がたくさんあるということです。例えば北陸地方だけで、上場企業は59社もあります。ブルボンや亀田製菓など、世界展開を目指している著名な菓子メーカーは、東京ではなく新潟にあるのです。新潟には38社の上場企業があります。

東京は確かに経済の中心かもしれませんが、優秀な人が集中している分、競争も激しい。そんな中で高い家賃を払いながら年収1000万円を稼ぐよりも、例えば、福岡の優良企業で年収700万円を稼ぎ、可処分所得を増やしつつ自然にも恵まれた豊かな暮らしを送るほうがいい、という選択もあるでしょう。

僕が湘南で感じたように、そのような生活を仕事のパフォーマンスを高める投資と考えることもできますし、家族を含めた人生の幸福度を高めることもできるのです。

東京での暮らしに限界を感じている人は少なくないはずです。東京で働いてきた人が、親の介護や相続の問題で地元に帰ることを考えるということもありますよね。そういうときに、「やっぱり地元はいいよな。でも、仕事がな……」とブレーキがかかるのです。ハードルになっているのは仕事だけです。実際、やりがいを感じて、自己研鑽できる仕事さえあれば、東京から出てもいいというデータもあります。

国内の就業労働者約6700万人のうち、優秀な人材は東京に集まっており、人材配分のバランスがとれていません。テクノロジーの力で適正な配分をサポートし、ライフ・シフトを推進することができれば、日本のGDPをまだまだ上げることができる。僕らは、そういう世界を作りたいと考えているのです。

さらに僕はいま、30年後の未来にも目を向けています。2050年の日本の労働人口は、少子化によって確実に減少しています。海外から労働者を受け入れる必要が必ず出てくるでしょう。それを誰がやるのか。「じゃあ僕がやろう」と思いたち、現在は家族とマレーシアに移住し、2018年にクアラルンプールに現地法人を立ち上げました。

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