《プロに聞く!人事労務Q&A》労基法改正の適用が猶予される中小企業の範囲とは?

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次に、「資本金の額または出資の総額」ですが、個人事業主や医療法人などのように資本金や出資金の概念がない場合には、労働者数のみで判断することになります。

労働者数ですが、これは事業場単位ではなく、「企業単位」で、しかも「常時使用する労働者数」で判断します。臨時的に雇い入れた場合や臨時的に欠員を生じた場合については、労働者の数に変動が生じたものとして労働者数に含みません。パートやアルバイトであっても臨時的に雇い入れられた場合でなければ、常時使用する労働者数に算入する必要があります。

出向労働者は、在籍出向者の場合は、出向先と出向元双方の労働者数に算入され、移籍出向(転籍)の場合は、出向先のみの労働者数に算入されます。派遣労働者は、派遣元の労働者数に算入します。

なお、出向の場合は、割増賃金の支払い義務のある事業主に今回の改正が適用されますので、出向元が賃金支払いの義務を負っていて、出向元が大企業であれば、出向先が中小企業であっても1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金率は5割以上としなければなりません。

派遣の場合は、派遣元に賃金支払い義務がありますので、派遣元が大企業であれば1カ月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を5割以上としなければなりません。

企業グループを形成している場合は、グループ単位で判断するのではなく、個々の法人単位で判断します。

<具体的事例>
(例1)A社
製造業(その他の業種に該当)、資本金2億円、労働者数500人 →中小企業

(例2)B社
労働者派遣業(サービス業に該当)、資本金6000万円、労働者数200人 →大企業

(例3)C社
パソコンの販売業(小売業に該当)とソフトウエア業(サービス業に該当)を兼業、資本金1億円、労働者数80人
(1)主たる事業がパソコンの販売業と判断される場合 →大企業
(2)主たる事業がソフトウエア業と判断される場合 →中小企業

 

半沢公一(はんざわ・こういち)
1980年東洋大学経済学部卒業。IT関連会社で営業、人事労務及び派遣実務に従事した後、91年に独立し半沢社会保険労務士事務所を開設。就業規則をベースとした労務相談を得意とする。企業や団体での講演・講義も多い。現在、東京労働局紛争調整委員会あっせん委員、東京都社会保険労務士会理事等を務めている。著書多数。


(東洋経済HRオンライン編集部)

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