築地本願寺「インスタ映え」カフェ大行列の理由 知恵を絞って誕生させた「18品の朝ごはん」

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そうと決まれば行動あるのみですが、私は建築会社などに直接働きかける前に、デザイナーを探すことにしました。

心の拠り所という宗教の大切な役割は、目に見えないし、感じるしかない。そこで私はプロジェクト始動にあたって、トータルイメージをきちんとつくり上げてくれるデザイナー、クリエーティブ・ディレクターが不可欠だと考えたのです。

「木々は造園会社に伐ってもらおう」「インフォメーションセンターはいい設計士に頼めばいい」。こんな具合に個別にやっていたら、出来上がったときのイメージはばらばらになってしまいます。

インフォメーションセンター内には「お寺の本屋さん(ブックセンター)」も併設(写真提供:築地本願寺)

総合的にすべてを見渡す人がいて、その指揮官のもとで「新たな築地本願寺のイメージ」をつくり上げなければ、築地本願寺の再構築――リブランディングは成功しないでしょう。

そこでお願いしたのが、現代美術作家でデザイナーの中山ダイスケさん。何人もの候補者にお会いしましたが、「私自身、お寺や宗教に興味があります」と言ってくださいました。

実績やデザインやアートディレクションの能力はもちろんのこと、私たち僧侶の考え方やセンスをくみ取り、理解する力が抜群なのです。

“カメラ女子”にも入ってみたいと思わせる場所

木々がなくなり、朗々と開けた境内は、明るい空間に生まれ変わりました。2017年11月に落成したインフォメーションセンター、合同墓のある礼拝堂はまるで現代美術館のようなのに、異形ともいっていいインド様式の本堂と不思議にマッチしています。また、境内からは有料駐車場をなくし、創建当時のデザインの石模様と芝生の文様を再現しました。

築地本願寺は私たちの思惑どおり「入ってみたいと思わせる、入りやすい場所」に変わりました。外国人観光客や一眼レフをぶら下げた“カメラ女子”など、今まで見かけなかった人の姿が見られるようになったのです。

銀座や築地でのショッピングのついでに、カフェに立ち寄る、写真を撮るために境内に入ってみるという方々が築地本願寺に親しみを持っていただくことで「ご縁をつくる」。

そのご縁をつなげる、ご縁がつながった方々との関係をさらに深めることに、私たちは日々取り組んでいます。

安永 雄彦 築地本願寺代表役員・宗務長

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やすなが ゆうひこ / Yuhiko Yasunaga

1954年生まれ。東京都出身。開成高校、慶應義塾大学経済学部卒業。ケンブリッジ大学大学院博士課程修了(経営学専攻)。三和銀行(現三菱UFJ銀行)に21年間勤務。大手鉄道会社における新規事業担当の一方、ITを活用した消費者金融会社の設立、開業を担当。外資系大手エグゼクティブ・サーチ会社を経て独立、島本パートナーズの代表取締役社長として経営幹部人材のサーチ・コンサルティング業務に従事、経営者や企業幹部向けのエグゼクティブ・コーチング活動を展開。2015年7月、築地本願寺代表役員・宗務長に就任。僧侶組織のトップとして法務に従事、寺院の運営管理や首都圏での個人対象の新しいかたちの伝道布教活動を企画推進中。

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