築地本願寺「インスタ映え」カフェ大行列の理由 知恵を絞って誕生させた「18品の朝ごはん」

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ステップ1として、築地本願寺が開かれたお寺になり、広く一般の人たちに「足を運んでみよう」と思ってもらう。そうすれば今までお寺に関心がなかった人ともご縁をつくり、お寺を身近な存在だと感じてもらうことができます。

ご縁ができたらステップ2です。「お墓についてわからないことがある」「家族が重い病気になって、余命宣告を受けたので誰かに相談したい」というとき、「あのお寺なら相談しやすそうだ。話しに行こう」となれば、関係が深まっていきます。つくったご縁をつなげるということです。

その関係が継続したら、ステップ3です。「せっかくなら浄土真宗の教えを学びたい」「うちのお墓と葬儀や法要は、築地本願寺にお願いしようか」という気持ちが芽生えた人たちに、門信徒になっていただく。

こうして誕生した「顧客」――つまり「新しい門信徒」は、昔ながらの信仰心に厚い浄土真宗の門徒さんたちとはタイプが違うでしょう。

長年の門徒さんには、敬虔な信仰心を持ち、定期的なお寺へのご懇志(お布施)を欠かさず、報恩講(ほうおんこう)、永代経、盆・彼岸という節目ごとに必ずお寺にお参りをし、京都の本山にも年に1回は行くという方が大勢います。新しくご縁をつくる方々は、おそらくそういう従来の信仰行動をする人たちではありません。

でも、私はそれでいいと思っていました。なぜなら新しい顧客(新しいタイプの門信徒)こそ、これからの時代の普通の人々、お寺を支えてくださるボリューム層顧客だからです。

インスタ映えする「18品の朝ごはん」

3つのステップを実現するにあたって、まず具体化したのは、新たな複合施設、インフォメーションセンターをつくることでした。インフォメーションセンターが寛ぎと安らぎの空間になるには、心惹かれる楽しみもあってしかるべきです。総合案内や総合相談窓口があるだけでは、いくら開放感あふれる建物であっても、お寺と縁もゆかりもない人は足を運んでくれません。

誰もが気軽に立ち寄れる「築地本願寺カフェTsumugi」(写真提供:プロントコーポレーション)

そこでつくったのが「築地本願寺カフェTsumugi」。「『寺と』カフェ」というコンセプトで、法要やお参りにいらっしゃる方のみならず、「誰もが気軽に立ち寄れる場所」を目指しました。

入り口には築地本願寺のロゴがあしらわれたTsumugiの表示。店内からは大きなガラス越しに本堂を眺めることができ、ゆったりと安心のひとときを過ごせるように設計されています。

カフェは空間も大切ですが、メニューも重要です。和定食やパスタ、抹茶やほうじ茶を使ったお寺らしいスイーツなどを吟味してそろえましたが、何か、看板になるものがほしい……。

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