戦国時代の甲冑が生んだ、超絶アート クワガタから竹の子まで、とにかくリアル

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ざくろにとまったセミ

 

阿弥勝義 《柘榴に蟬飾器》 清水三年坂美術館蔵

最後に紹介するのは、赤い銅の色を生かした、ざくろ形の小物入れだ。

「せみは今、飛んできたばかりで内側の羽をたたみきれていません。前足をざくろの雄しべにかけています。右側からはざくろを食べた虫がはい出してきています」

作者の正阿弥勝義は、蓮の葉に飛び移った瞬間のかえる、くもを狙うはとなど、生きものの一瞬の姿をとらえて金工で再現している。

「もともと岡山藩の池田家のお抱えの金工師で、目貫や小柄などの刀装具を作る家の出ですが、明治維新後はこうした置物や調度品を作っていました。生きものに注ぐ観察眼に優れ、こだわり方がマニアック。しかもセオリーどおりではなく、もう一歩踏み込んだ自分の解釈で仕事をしているので、物語性が感じられます」

これらのジャンルのほか、七宝、刀装具、漆工、薩摩の様式の陶磁器、刺繍による絵画なども展示されている。いつもは年配客の多い三井記念美術館だが、今回の展覧会は20代、30代の来館者も目立つという。美術の知識もうんちくもいらない、見るだけで楽しめる展覧会だ。


「超絶技巧! 明治工芸の粋」

2014年4月19日~7月13日

三井記念美術館
東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
10:00~17:00(金曜は19:00まで、いずれも入館は閉館の30分前まで)
月曜休館
一般1300円、大学・高校生800円、中学生以下無料

会期中、展示替えあり。

 

仲宇佐 ゆり フリーライター

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なかうさ ゆり / Yuri Nakausa

週刊誌のカルチャーページの編集・執筆を経て、美術展、ラジオ、本などについて取材、執筆。全国の美術館と温泉をめぐり歩いている。

 

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