「エクリプスクロスPHEV」から見る三菱の再起 暮らしの安心という新たなクルマ選びの基準

拡大
縮小

足元ばかりを見る経営が、大手といえども10年後の存続を見通せない事態にしている。さらに東日本大震災をきっかけに、日産と三菱自動車はEVやPHEVが災害時の電力供給に役立つことを、身をもって経験した。被災した人々も電動車両の現実を体験した。

今、日産と三菱自動車は各自治体と災害協定を積極的に結び、なかでも日産は、ビークル・トゥ・ホーム(V to H)として、EVから自宅への電力供給システムを構築している。三菱自動車も電動ドライブハウスの取り組みを昨年からはじめ、EVとPHEVからの電力供給や太陽光発電との連携を開始した。

三菱自動車は自治体と災害時協力協定も推進している(写真:三菱自動車工業)

クルマの電動化は、単なる移動手段としての環境適合だけでなく、気候変動による異常気象が常態化した今日、生活を維持し、安心した日々を過ごすための支援システムとして機能するようになっているのである。

クルマ選びの新基準、暮らしの安心を提供できるか?

三菱自動車の目指すべきは、新車の商品性を高め、企業体質の改善による信頼を取り戻しつつ、経営の柱の1つとする電動化のさらなる強化によって、暮らしの安心を提供する企業へ邁進することである。

そのうえで、新車開発のもう1つの柱である、4輪駆動とS-AWCによる走行安定制御は、異常気象や災害時における緊急の移動も確保する可能性を広げることになる。

東洋経済オンライン「自動車最前線」は、自動車にまつわるホットなニュースをタイムリーに配信! 記事一覧はこちら

世界的な冒険ラリーであるパリ~ダカールで、2度優勝を果たした三菱自動車の増岡浩は、「三菱のクルマであれば、万一のときでも自分のクルマで家に帰れる安心がある」と語る。

万一のときを考えながらの暮らしがこの先続く可能性は高い。衣食住に加え、移動の自由が生活を守ることは新型コロナウイルスの広がりでも明らかになった。これに異常気象が加わるとき、クルマ選びは新たな視点が必要になってくるだろう。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT