「象を買った」不正伝説も!海外ロケの衝撃実態 想定外はつきもの、経費のごまかしもはびこる

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ではコロナ禍の今、視聴者はどんな内容の海外ロケ番組を求めているのだろうか。Eさんは言う。

「われわれは最初、『コロナが収まったらこんなところに行こう!』みたいな内容のものを放送していました。しかし、実はこうしたものはまったく受けないのです。『観光ビデオ』は視聴率が全然取れない。

むしろ世界の各地から明るい話題や希望の持てるトピックを探してきて放送すると、多くの人に見てもらえます。歴史をゴリゴリ掘り下げるとか、深い内容のものやシビアなものも見られるようになってきた。コロナを機に日本の視聴者が求めるレベルは高くなったのかもしれません」

ただ海外のことをやってもダメ

ベテランのAさんも海外ロケ番組の本質について、こんな考えを持つ。

「海外ロケ番組は、ただ『海外のこと』をやったのではダメなのです。『日本人の見たい海外』でなければなりません。日本人が好きで、感情移入できる話を世界各地で探してこなければ見てもらえません。

例えばヨーロッパの農家のことを紹介していても、そこには『日本人が失ってしまった、ものを大切にする心』があったとか、そういうストーリーがなければならない。世界が見たいのではなく、世界を通して日本が見たいのです。

もしこれから海外ロケを現地任せにするのだとしたら、『日本から現地に行って初めて感じられること』をどのように補っていくのか、が大切になるのかもしれませんね」

今の日本人は、特に若い人を中心に「内向き」で、海外に関心が薄い人が多いと言われる。しかしコロナ禍を経験して、われわれは「世界が狭く、お互いに強く影響し合っている」ことを痛感したはずだ。これからもわれわれ日本人が「世界を知り、世界に興味を持つための窓」として、良質な海外ロケ番組の重要性は高くなっていくと私は信じている。

その苦労は大変なものだということはよくわかっているが、ぜひ現場の職人たちには、頑張っていい番組を作り続けてもらいたいと心から願っている。

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鎮目 博道 テレビプロデューサー、顔ハメパネル愛好家、江戸川大学非常勤講師

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しずめ ひろみち / Hiromichi Shizume

1992年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなど海外取材を多く手がける。またAbemaTVの立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、多メディアで活動。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルのメディアとしての可能性をライフワークとして研究する。近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社・2月22日発売)

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