ほかにも、中央アフリカにロケ隊を派遣しているときに内戦が勃発し、市街戦になってしまってホテルから3週間動けなくなってしまったという経験や、辺境の砂漠で出演者とスタッフが乗った乗用車が交差点で衝突事故を起こし、重傷のスタッフを現地から緊急搬送した経験などもあるという。
いくら現地の状況を逐一チェックして、政情不安な国には行かせないようにしても、突然状況が変わることはあるし、ましてや交通事故となるとなかなか防ぎようがない。
民放局員として海外番組経験の豊富なCさんもこう話す。
「海外で長距離の車での移動や、ヘリに乗っての撮影などはとても気を遣います。過去には撮影中の死亡事故もけっこう起きていますので。
事故が発生した場合には『どこで医療を受けさせるか』も大きなポイントです。医療水準の低い国で下手に治療されると、かえって状況が悪化したり、深刻な後遺症が残ったりする結果にもなりかねません。日本の医師と相談しながら、どこまで移送して入院させるかを考えます」
経費のごまかしが頻発
海外ロケを巡るトラブルで、もうひとつよく発生するのが「経費のごまかしだ」とCさんは指摘する。
「かつては、何十本ものボールペンを使って両手で字を書き、自由自在に領収書を偽造するのが売りというコーディーネーターがいました。海外ロケに慣れているベテランディレクターには、経費をごまかして裏金を作っていたりする人もいます」
筆者もかつて、東南アジアのロケでお金を使いすぎた番組のロケ隊が領収書を偽造し、「象を1頭買った」ことにしたという「業界伝説」を聞いたことがある。あやしんだ局の経理が上野動物園にゾウの値段を問い合わせて、不正が発覚したというのだ。
あくまで「伝説」なので真偽の程はかなり怪しいが、そんな逸話が語られるくらい海外ロケの精算では不正が行われているということだ。
そして前編でも書いたが、海外ロケは国内に比べて難易度が高く、特別なテクニックや場数の多さが必要になってくる。そのため海外ロケを得意とするベテランディレクターがたくさん活躍しているのだが、こうしたディレクターたちがいろいろと悪さを働いているという側面も否めない。
海外ロケ番組で働く女性スタッフ・Dさんはこう証言する。
「ロケ隊みんなで晩ご飯を食べていると、男性スタッフたちが私たち女性スタッフに『早く寝ろ』というオーラを強烈に出してきます。男だけで早く街へ遊びに出たいということを言外に匂わせてくるんです。
もっと露骨な場合だと、ゴーゴーバーみたいなところの領収書を平然と精算に回してくるディレクターもいますよ。夜中に女性タレントが体調を崩し、助けを呼ぼうと連絡したら、ロケ隊の男たち全員が街に遊びに行っていて誰にも連絡がつかずカンカンに怒っていたこともあります」
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