高齢者たちが「病院での死」を選ばない複雑背景 コロナ後も自宅での最期を選ぶ患者が増えるか

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さらに、新型コロナ感染者についても、「在宅療養が選択できるようになりつつある」として、その理由を次のように説明する。

「当初は自らの感染を恐れ、発熱患者へのケアを停止するとしていた地域医療機関や訪問看護ステーションも、新型コロナ感染者であっても受け入れるとするところが増えてきている。

在宅医療に関わる専門職の間では、新型コロナについても、誤嚥性肺炎のように高齢者にとっての死亡リスクのある疾患の1つにすぎない、という認識も徐々に広がってきており、新型コロナに感染したとしても、療養場所の選択が可能な状況が生まれつつある」(佐々木理事長)

一方、やまと診療所の安井院長は、「すでに入院している人たちも、これから入院しようと思っている人たちも、コロナ禍で入院しても家族に会えないから自宅を選んだというというだけではなく、コロナをきっかけに、死について考え、残された時間をどう過ごすかなどを考えたうえで自宅を選ぶ、つまり死生観も変わったのなら、コロナ収束後も在宅での看取りは増え続けるだろう。しかし、死生観が変わったと言えるのか」と疑問を呈する。

例えばアメリカでは、コロナで20万人以上が亡くなっており、死を身近なものとして考えた人はたくさんいるだろう。しかし、日本で亡くなった人は1800人近くでアメリカと比較すると少ない。日本人が感じたのは「危機」であって、自分も死ぬかもしれないと思い、(病院での治療を選ぶのか、在宅での治療を選ぶのか、など)死に関することを真剣に考えた人ははたしてどれだけいたのだろうか。

病院にいれば安全という考えが少し崩れた

またマスコミの論調をみても、コロナは怖いもので、どうやってかからないようにするかというものが多く、かかってしまった場合にはどうするのか、どう亡くなるのかということに重きを置いている報道はあまりない。そうした状況では、死生観が変わったとは言えないだろう、と安井院長は指摘する。

その一方で安井院長は「病院に入ってさえいれば安全、安心だという概念が、コロナによって少し崩れた。また、在宅という選択肢があることを知らなかった人たちが、コロナによって知った人たちもいる。これらの要因で、在宅看取りはコロナ前より増えていくことは間違いないだろう」ともみている。

コロナ収束後の在宅での看取りの患者数が増えるかについては、佐々木理事長と安井院長の見方はやや異なっているが、コロナ禍以前よりは、家族で一緒に最期を看取りたいという人は増加していくだろう。

塚本 優 終活・葬送ジャーナリスト

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つかもと まさる / Masaru Tsukamoto

北海道出身。早稲田大学法学部卒業。時事通信社などを経て2007年、大手終活関連事業会社の鎌倉新書に入社。月刊誌の編集長を務める。2013年フリーライターとして独立。ライフエンディングステージの中で「介護・医療」と「葬儀・供養」分野を中心に取材・執筆している。ポータルサイト「シニアガイド」に「終活探訪記」を連載中。「週刊高齢者住宅新聞」などに定期寄稿。

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