高齢者たちが「病院での死」を選ばない複雑背景 コロナ後も自宅での最期を選ぶ患者が増えるか
「入院に関する大きな変化」のもう1つは、患者側も入院という選択を忌避するようになっていることである。
「患者・家族が入院を忌避するモチベーションは2つある。1つは、病院では、コロナに感染する危険があるのではないかということ。もう1つは、入院すると家族に会えず、死に目に会えないのではないかということだ。この2つの理由で、入院したくないという患者が増え、入院している患者の中にもできるだけ早く家に帰りたいという人が増えている」(佐々木理事長)
これまでは、最期は家で過ごすのが心配で、入院していたほうが安心だと考えていた患者・家族が一定の割合でいたが、その割合がさらに少なくなってきているのだ。
これから入院しようと思っていた人にも影響
東京都板橋区に在宅専門診療所を構える医療法人社団焔「やまと診療所」(現在患者数1100人、2019年自宅看取り数287人)でも在宅での看取り患者が増えているという。2020年4~9月の患者死亡者数は306人だった。同診療所は在宅の中でも自宅に特化しており、306人の内訳は自宅死227人、病院死79人だった。
2019年の同時期と比べると、全患者死亡者数の増加は104人(51.5%増)と大幅に増え、内訳では、病院死は横ばいにとどまっているのに対し、自宅死は104人(84.6%増)とじつに倍近くも増えている。
安井佑院長はその背景について、「コロナ禍によるものであることは明らかで、とくに、病院では家族の面会を禁止していることが自宅死の増加に大きく影響していると思う。家族面会の禁止は、すでに入院している人たちと、これから入院しようと思っていた人たちの両方に影響を与えている」としたうえで次のように続ける。
「すでに入院している人たちは、例えば、がんの末期で入院治療していて、これ以上治療法がないという最終段階に入ったときには、緩和病棟に入院する、外科病棟で診てもらう、自宅に帰るという選択肢がある。それがコロナ禍により、病院では家族に会えないから、自宅を選ぶ人が増えているようだ」(安井院長)
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