トランプが劣勢の「フロリダ」で大逆転した真因 アメリカを南下して見えてきた知られざる現実

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それでも危機感を募らせるのは、民主党の候補者指名争いで敗れた革新派のバーニー・サンダース上院議員に象徴される急進左派の伸長を感じているためだ。トランプ氏はそこに黒人差別反対運動ブラック・ライブズ・マター(BLM)を機に起きた略奪・暴動、反ファシスト集団「アンティファ」を重ね合わせるイメージづくりを繰り返す。

10月22日の最後の大統領討論会でも、トランプ氏はサンダース氏の名を3回連呼した。バイデン氏は「戦っている相手はジョー・バイデンだ」と切り返したが、サンダース氏の影を印象づける意図は明らかだった。

マイアミ市内のリトルハバナ地区で葉巻店を営むキューバ系メル・ゴンザレス(62)は「バイデン氏はサンダース氏にたくさん譲歩している。私はアメリカがキューバのような道を歩むのを見たくない」と語気を強めた。

「アメリカがキューバのような道を歩むのを見たくない」と語るゴンザレス(写真:筆者撮影)

前回は独立系候補に入れたが、アメリカの社会主義化を阻止するための「極めて大事な選挙」と思い直し、いまでは熱烈なトランプ支持者だ。「キューバ人はみんなトランプに入れるさ。95%だ。BLMやアンティファがアメリカに火をつけ、民主党は社会主義を語っている。狂ってるよ」。

1959年のキューバ革命後に逃れてきた人が築き上げたキューバ系移民社会では、商店やレストランを苦労して経営してきた人が多い。マイアミでも新型コロナで観光客が急減して苦境が続くなか、社会主義の統制経済を連想させるロックダウンを批判し、経済再開を訴えるトランプ氏の主張は響きやすい。

まるで反社会主義の決起集会

投票を2日後に控えた11月1日、深夜の午後11時半にマイアミで開かれたトランプ氏の選挙集会も、まるで反社会主義の決起集会のようだった。前座として登壇したキューバ系のマルコ・ルビオ上院議員が数千人を前に、「ボートに乗って命懸けで社会主義から逃げてきたみなさん。民主党から社会主義が始まるんです」と拳を振り上げた。地元キューバ人バンドが軽快なサルサ調の応援曲「I WILL VOTE FOR DONALD TRUMP」を生演奏してみんなで踊る場面もあった。

コロナ禍でリトルハバナの人通りも少ない=11月2日、マイアミ(写真:筆者撮影)

場が温まったところで、愛国心を高揚させる定番曲「ゴッド・ブレス・ザ・USA」をBGMに、MAGA帽子をかぶったトランプ氏が大統領専用機から姿を見せると興奮は最高潮に。赤い帽子をかぶった群衆が「ウィー・ラブ・ユー」「フォー・モア・イアーズ」(もう4年)と大歓声で迎えた。

トランプ氏は「アメリカを共産主義のキューバや社会主義のベネズエラに変えてしまおうとしているが、そうはさせない」と宣言。「私は自由を求めて戦う誇り高きキューバ、ベネズエラ、ニカラグアの人たちとともにある」と呼び掛けた。

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