トランプが劣勢の「フロリダ」で大逆転した真因 アメリカを南下して見えてきた知られざる現実

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フロリダ半島南端に位置し、メキシコ湾を挟んでキューバと向き合うマイアミ・デイド郡は、キューバから逃れてきた移民が人口の3割近くに達する。一般に民主党支持傾向が強いヒスパニックにあって、キューバ系は、ニカラグア系・ベネズエラ系などとともに、社会主義国により厳しい姿勢で臨む共和党寄りだった。だが、2016年のときは、移民への敵意をむき出しにしたトランプ氏はキューバ系らの支持を取りこぼしていた。

トランプ氏は、キューバ系を最重要のフロリダ州で支持拡大の余地が残る数少ないフロンティアととらえ、政権発足直後から重視してきた。キューバと国交回復を果たしたオバマ前政権を批判して制裁を強化し、今年9月にも、旅行者によるたばこの持ち帰りを禁止するなど新たな制裁を打ち出した。

一方、昨年10月には、豪華リゾートやゴルフ場を所有するマイアミ近郊のパームビーチにニューヨークから住所を移すと表明し、選挙戦中も「フロリダは私のホームステートだ」とアピール。息子エリック氏、その妻で義理の娘ララ氏ら、トランプファミリー総出で手分けして州内を駆け回った。

「アメリカが社会主義になってほしくない」

ペンシルベニア州から車で約1カ月かけて、大陸を縦断する形で約5000キロを南下してきた私は、フロリダ州タンパに入ってすぐに強烈な違和感を覚えた。

トランプ氏の集会場の外で「MAKE AMERICA GREAT AGAIN」(MAGA)帽子をかぶった女性4人組に声をかけると、元教師ジニー・サラゴサ(64)は「共産主義のキューバから逃げて45年です。私は1人の男性にではなく、自由と正義のために投票します」。傍らのベネズエラ系女性(45)も「アメリカが社会主義になってほしくない」と、冷戦期を思わせるような口ぶりだったのだ。

トランプの旗を誇らしげに見せる支持者=11月1日、マイアミ(写真:筆者撮影)

支持者のスマホには、トランプ陣営から「投票日の選択肢は2つだ。自由主義世界の誇り高きリーダーであり続けるか、それとも急進的社会主義に転落してアメリカンドリームが破壊されるか」と、政治体制の選択を訴えるメールが連日届く。街角でのインタビューでも、社会主義という言葉が次々に出てきた。

フロリダ国際大のマイケル・ブスタマンテ助教(キューバ現代史)は「キューバ系移民に極めて劇的なトランプシフトが起きている」と語る。「社会主義への恐怖をあおるレトリックが蔓延し、東西冷戦の最悪期を見ているようだ」。

反社会主義という争点は決して目新しいものではない。キューバ系移民たちにしても、バイデン政権になるといきなり社会主義国化すると本気で考えているわけではない。

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