日本で「欧米流ジョブ型雇用」導入が厄介な理由 今こそ知っておくべき7つのポイント

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  1. ②給与が上がらない

働き方がジョブ型になると、報酬も職務給もしくはそれと類似のものになる可能性があります。つまり自身の能力ではなく、職務内容によって報酬の額が決定されるので、能力による報酬の差が開きにくくなります。従来は勤続年数に応じてそれなりの昇給があったかもしれませんが、職務が変わらなければ報酬も大きく変わることがないというわけです。

特に厳密な同一労働同一賃金が推進されていくと、その傾向は顕著になるでしょう。自身の収入を上げるには、自分の責任とお金で自己投資し、スキルを身に付けて、高い賃金が支払われるジョブへ自ら移っていく必要があるのです。

  1. ③ゼネラリストにはなれない

日本的経営の特徴としてジョブローテーションがあります。これは入社から数年おきに配置転換をし、社内のさまざまな部署を経験させることです。これがあることによって適材適所を把握できるというメリットがあります。

現在の部署で思ったようなパフォーマンスを発揮できなくとも、配置転換により自身を活かす場所を発見できることがあります。

職務の内容は基本的に変更されない

このようなジョブローテーションは、日本的経営のように報酬が職務ではなく能力や勤続年数に紐づいているからこそ運用が可能となります。なぜなら、職務内容に報酬が紐づいている場合は、配置転換のたびに報酬が変更されることになるからです。

ジョブローテーションを廃止し、完全なジョブ型に移行した場合は、基本的に職務内容の変更はされません。思ったような成果を出すことができなくとも、その職務にとどまらなければならないのです。そこで、経営層が見切りをつければ解雇されてしまいます。

現在の日本において簡単に解雇に至ることはありませんが、そうなると、飼い殺し状態になってしまうことが予想されます。

  1. ④ムードメーカーはいらない

メンバーシップ型を採用している日本企業では客観的に把握し難く、特定のジョブを遂行するために必要な能力として明示し難い「協調性」や「コミュニケーション力」といった漠然とした能力を重視し、評価対象としていることが少なくありません。中には一般職に対してもリーダーシップを求め評価対象とすることもあります。

しかし、ジョブ型では特定のジョブをこなすために必要な客観的な遂行能力こそが期待され、評価対象とされますので、これらを発揮する場面が極端に減少します。

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