「鬼滅の刃」と「半沢直樹」2大ヒットの大きな差 テレビドラマの王者も国民的広がりでは後塵

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その点、テレビアニメ「鬼滅の刃」は2019年4~9月に放送されたほか、動画配信で見られたうえに、約1年後の今年10月に続編の映画が公開されました。この「待たせない」テンポのよさもヒットの要因であり、“視聴者ファースト”の1つ。しかもテレビアニメの最終話で劇場版の制作を発表し、その約半年後に公開日が明かされるなど、ファンたちはストレスを抱えることなく、幸せな気持ちで待ち続けることができました。

一方、TBSは7年間のブランクを打ち消すように、今年1月から「2020年は半沢直樹イヤー」というキャッチコピーを掲げてスペシャルドラマやラジオドラマを放送しましたが、やはりブランクは長く、後手に回ってしまった感は否めません。

ドラマは生身の人間が演じるだけに、年齢を重ねて外見や印象が変わるなど、ブランクが長くなることで不安要素が増していくものです。「第1弾の成功が確定したら、第2弾の制作が決まり、キャストとスタッフをそろえる」という流れは仕方ありませんが、7年のブランクを半減させることはできたのではないでしょうか。

グッズ展開と企業コラボに見る甘さ

そしてもう1つ、「鬼滅の刃」が圧倒的に勝っているのは、企業コラボレーションの多さ。

主なところだけでも、ローソン、日清食品、ロッテ、森永製菓、ダイドードリンコ、UHA味覚糖、丸美屋、おやつカンパニー、くら寿司、築地銀だこ、イオンリテール、JR各社、ユニクロ、ジーユー、ジーンズメイト、花王、高田織物、ベネッセコーポレーション……。

食品から外食、衣料、旅行、教材まで、コラボ商品の多彩さは前例がないほどで、日本を代表する企業が次々に過去最高売り上げを更新するなど経済効果はすさまじく、コロナ禍に苦しむ日本経済に大きく貢献しています。

一部で「やりすぎ」という批判こそありますが、大半のファンは「グッズ集めとして楽しんでいる」という事実がありますし、そもそも魅力的なキャラクターが多いからコラボ商品も充実させられるのでしょう。

ただ、その「魅力的なキャラクターが多い」という点は「半沢直樹」も同じはず。しかし、番組グッズは自社サイトなどで販売する「倍返し饅頭」、Tシャツ、クリアファイル、限定ウォッチなどにとどまり、ファンを喜ばせ、日本経済に貢献したとは言えません。

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