「鬼滅の刃」と「半沢直樹」2大ヒットの大きな差 テレビドラマの王者も国民的広がりでは後塵

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さらにネット上の配信でも、ABEMA、Amazonプライム・ビデオ、dTV、GYAO!、ニコニコ生放送など、大半の動画配信サービスをカバー。「テレビ、映画、動画配信サービスのいずれかで見られる」という状態を作り、多くの人々が作品を知って、気軽にふれられる機会を用意しました。また、見てもらう時間帯もゴールデン・プライムタイムにこだわらず、「深夜帯、あるいは、録画や動画配信サービスで好きなときに見てもらえばいい」という“視聴者ファースト”のスタンスだったのです。

一方、「半沢直樹」は視聴率を得るためにリアルタイムで視聴してもらうことにこだわり、通常は1週間見られるはずの見逃し配信すら終盤まで行いませんでした。「『半沢直樹』を見たいのならリアルタイムで見て」と視聴者の行動をコントロールするような姿勢は、“テレビ局ファースト”であり、この点では、見られる場所をできる限り増やした「鬼滅の刃」に大きく劣り、それどころか、他のドラマよりも間口を狭くした見づらい状態だったのです。

また、「鬼滅の刃」は映画公開前の今年10月10日、17日にフジテレビのゴールデン・プライムタイムでアニメの総集編を放送。ファン層をさらに広げたうえで映画公開につなげましたし、映画も「時刻表並み」と言われるほど上映スクリーン数を増やして、ファンが繰り返し見られる状態を作りました。

アニメ「鬼滅の刃」は“視聴者ファースト”のスタンスで接点を増やしたことで、「ふだんあまりアニメを見ない」という人々にもリーチできました。その点、ドラマ「半沢直樹」は“テレビ局ファースト”のスタンスで視聴者との接点を減らしたため、「ふだんあまりドラマ(テレビ番組)を見ない」という人々への訴求が十分だったとは言えないのです。

そんな“視聴者ファースト”“テレビ局ファースト”というスタンスの差が、世間の反響や原作本の売り上げなどの結果に表れているのではないでしょうか。

7年間のブランクとファンの放置

前述した「視聴者が作品にふれられる接点の多さ」と同じくらい、「鬼滅の刃」と「半沢直樹」の大きな差につながっているのが、リリースのテンポとブランク。

ドラマ「半沢直樹」の第1シリーズが放送されたのは2013年夏で、第2シリーズが放送された今年夏まで7年ものブランクがありました。しかも、その間、再放送や動画配信を行わず、ファンたちを満足させることも、新たなファンを増やすこともしなかったのです。

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