その理由は明白で、会社勤めの視聴者のほとんどが、契約社員か平社員か中間管理職。1万人の社員がいる会社で、社長は1人しかいません。残りの9999人は、「社長以外の人」で、上司がいる人たちです。
そのため、視聴者のほとんどが社長の気持ちなどわからないし、共感もできないのです。
経営学的な視点から見れば、「半沢直樹」は、管理職の組織行動を反面教師的に学ぶドラマで、「ルーズヴェルト・ゲーム」は、経営者のリーダーシップを学ぶドラマです。
つまり、視聴者ターゲットの観点から見ると、この2つのドラマは、まったく別物だといえます。
それに加えて、「ルーズヴェルト・ゲーム」の青島製作所、細川充社長(唐沢寿明)の敵は、競合他社のイツワ電器社長(立川談春)や取引先のジャパニクス社長(香川照之)。上司でもお上でもありません。つまり、敵が「権威」ではない。競合他社や取引先と戦うドラマでは、半沢と同じようなカタルシスを期待していた視聴者は、がっかりしてしまったことでしょう。しかも、細川充は、「リストラを断行するぞ」と言ってみたり、リストラした人を呼び戻そうとしてみたり、いい人なのか悪い人なのかもわかりません。
現段階では、普通の人が共感しづらい人物設定となっています。
銀行員の間では「半沢直樹」はファンタジードラマだと言われています。あんなこと、実際にはありえないと。しかしそうだとわかっていても、やられても、やられても上司や権威(金融庁)に倍返しする半沢を見て、スカッとするわけです。うだつのあがらない上司の下で働く自分のかわりに、仕返ししてくれているようなもの。
半沢は中間管理職のヒーローなのです。
ところが、「ルーズヴェルト・ゲーム」の細川充は社長で、自らが権威です。
会長(山崎努)が上にいるものの、細川充社長が青島製作所の実権を握っています。社長が社内の悪事を暴いて、部下を恫喝しても当たり前。視聴者は、普段、会社で「怒られるほうの立場の人たち」がほとんどなのですから、共感できないのも無理ありません。現実の世界でさんざん、上司から怒られているのに、ドラマの世界でも怒られたくないのです。
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